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Re: 逃亡中事件簿 アンケート中(オリキャラ募集中)追加質問有り ( No.119 )
日時: 2010/03/12 20:02
名前: nanasi (ID: lerfPl9x)

二章 その参拾八  鬼さんこっちよ

「どうしたの?八月?」

心配そうに優しげな声色でミィちゃんは私にそう聞いてきた。

「否、なんでもない。」

私はさも元気そうに答える。

「だけど……、私の目を見てないよ?八月。向こう側向いてる。」

いつものようにかわいらしい高めの声でミィちゃんはそう言いかつての親友のいる方向を指差す。

その指の先と友江のいる位置の間は約五メートル。もちろん、友江が振り返ればすぐ先に私たちはいる。

振り返りませんようにってちょっと心の中で願ってみた。だけど、人生は甘くは無かった。

かつての親友は、否、友江はこっちを振り向いたのだ。そしてニィッと笑って一言そう言った。

「みぃっけた」

そう言ったかそう言い終わらない内に私はミィちゃんの腕をつかみ駆け出した。

「えっと、どういう状況なの?」

ミィちゃんはあせりながらも聞いてくる。

「私ちょっととある人物に追われてて、その手先。」

私はささっと答えた。

「あら、そんな悲しいこといわないでよ。親友でしょ?」

後ろの方から声が聞こえる。振り返らなくてもかなり近くにいることがわかるぐらい大きな。

「今は違う!」

走りながら答える。

「えぇ!?私たちの友情は永遠じゃなかったの?しょせんこんなものなの?未……」

「その名を呼ぶな!」

その、友江の声はかなり大きい。あと、一メートル否そんなに無いかも。

ちょっと考えた後私はミィちゃんの手を離した。

「え?」

きょとんとしたような声が左の方から聞こえる。ミィちゃんだ。

「ミィちゃん。一言言うよ。逃げて!」

私はめちゃくちゃ強く言った。

その声にミィちゃんは一瞬ひるみやがてどこかに向って走り出した。

「あら。お友達にも見捨てられちゃったのね。可哀想に……」

どこか哀れむように優しげに友江は言う。

「見捨てられてなんかいない!」

嗚呼。

こんなにも感情的になるなんて。

感情的になれるなんて。

感情的にさせるなんて。

ミィちゃん、ありがとう。

私は鬼に捕まった。

親友に捕まった。

友江に捕まった。

「残念。ゲームオーバー。」