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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: A dense fog ( No.1 )
- 日時: 2010/02/19 20:14
- 名前: 紅葉 ◆U7Z6hyBlbU (ID: kS1s3PtF)
見渡せば金網、コンクリート、質素な扉。人の気配はまばらだった。
また、見上げれば青空、太陽、存在感の薄い月。漂う雲は死んでいた。正確には、‘死んだ’様に見えた。
ふっと、小さく嘆息して、屋上の隅に仰向けに倒れる。頭を付けると、無機質な冷たさと硬さが、俺の後頭部に流れてくる。
いつからだろう。ただ過ごすだけの毎日に嫌気が射し込んだのは……。刻々と流れる時間。時の流れに不満を感じなくなったのは……。
小学生なんてまだガキの頃、友達と遊んでいる間は、ただただ時間がゆっくり流れてと、そんな無茶な事を心の隅で祈っていた。
だけど、やっぱり同じ時間の中に居る限り、時の制御なんて出来なくて、中学に入る頃には祈る事すらしなくなった。
結局、限られた時間を過ごしながら、どれだけ社会に貢献したかによって、人の価値は決まる。最近では、常々思っている。そんなマセた事をーー。
俺は無意識に唇を噛んでいた。拳を握りながら。舌でひと嘗めすると、鉄のような香りが口内に広がる。
正直気持ち悪い、血の味のどこが良いんだ? と、全国の吸血鬼共に問いたい。トマトジュースの方がまだ旨いだろうと……。
再び空を仰ぎ見る。
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