ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 少年と天狐の妖怪物語 ( No.2 )
- 日時: 2010/02/21 19:30
- 名前: 付喪 ◆29ayQzCLFo (ID: YpJH/4Jm)
第一章/起居挙動-ききょきょどう-
第一巻〆
泉井刀哉はこの時間が好きだ。糞退屈な授業も無い、大人しく本でも読んでいられるこの昼休みが。
(いやあ……。桑原の馬鹿につきあわされず、つまんねえ授業を受けなくてもすむ、何とも無い幸福な昼休みが俺は大好きだ……!)
刀哉はそんなある意味変人染みた事を考えつつ、延々と文字が綴られているたまに挿絵ありの文庫本(またの名をライトノベル略してラノベ)を読む。
あと何分だろうと、刀哉は顔を上げる。残り時間はあと10分、まだ教室に戻らなくても大丈夫だ。ほっとして刀哉が本のページに顔を下ろそうとすると、ふと見覚えのある顔が見えた。
「琴……坂?」
本棚から本を取り出している、人形のような顔立ちを整った少女は紛れも無く琴坂秋叉だ。転入初日から図書室で読書とは、琴坂は余程の読書好きなのだろうか?
まあ自分には関係無いと、刀哉は再び本へと視線を落とす。
——が、そういうわけでもなかった。
「それ、何」
まるで鈴を振った時の音のような、そんな声が聞こえた。刀哉よりの頭より少し上からだ。ページから目を離し、顔を上げる。
目線の先には琴坂秋叉がいた。
刀哉は驚愕のあまり後ろにぶっ倒れそうになった。だが第一印象はドジ野郎などという事は避けておきたかった。なので何事も無かったかのように、余裕綽々の面で琴坂を見上げる。
「えっと?」
「それ、何」
「えーと……?」
「それは何かって聞いてる」
表情は平然を装っているが、内心はビクビクである。何せ転入初日の美少女が友達作りとか学校探検とかそういう事の前に、只前の席だというだけの男子にわざわざ話しかけてきているのだ。
一体どう反応すればいいか分からないが、ここで無視、という第一印象最悪野郎も避けておきたかったので、とりあえず質問に答えるとする。
「んーと、ラノベ」
「ラノベって何」
「えーと……ライトノベルの略。てかライトノベルって何か知ってるか?」
「知らない」
「……」
泉井刀哉は言葉に詰まる。ここで会話が途切れてはいさようなら、以後気まずい空気というのも避けたい。最近避けたいものばっかりだと刀哉は心の中で溜め息をつく。
何とか会話を繋げなければ、と頑張って言葉を紡ぎだす刀哉。
「よ、読んでみるか……?」
「……」
一瞬沈黙。そして、
「興味無い」
撃沈。
琴坂秋叉は自分で話しかけたにも関わらず、すたすたとその場を去っていった。
刀哉は彼女の傍若無人振りに少しムッともした。だがスルーすると決めた筈なのに、悪い印象を与えたり会話と途切れさせたりする事を避けようとするなど、我ながら矛盾してる。刀哉は小さく溜め息をついた。