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Re: 神に魅入られし者。 ( No.12 )
日時: 2010/04/18 14:56
名前: 悠 ◆FXzmrZiArI (ID: w3Re2V0V)

              † 第一章 「黒神の創った者」 第五話 †

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「魅入られた彼女が逆に黒神自体を魅入り市長を殺したんだ」

「なっ・・・・・!」

驚きのあまり青年は言葉失い、その場で固まってしまった。しかし、不可能ではないのは確かだった。
そして、マジマジとその少女、シャルナを見つめる。
確かに、資料として貰った写真とは全く異なる容貌をし、何かが壊れたような笑みを浮かべている。
整った顔立ちなのだが、目は血走っていて恐怖を掻き立てられる。

「・・・・・・・・・本当に彼女が自分の父親を殺したのか?」 

青年は白神に聞く。その声は自分でも分かるぐらい震えていた。
何故、こんなにも震えているのか、何に自分は怯えているか分からない。
ただ、彼女は既に壊れている。それだけは、嫌でも分かっていたはずだった。
しかし、黒神に魅入られた人間は被害者になっても加害者にはなって欲しくなかった。

〈黒神〉というものは、個々で能力を持っておりとても強力な神だ。
個々の能力だけではなく、魅入る力——すなわち、人間にとり憑く力が強力だった。
神——白神、黒神両方とも人間を魅入らなければその力を出す事は出来ない。

白神のほうは、神の世界に元々いる神なわけで人間にとり憑く力はさほど強力でない。
昔からいるエクソシストと言う名の、神に仕える人間を生み出す事のみ使われていた。
魅入る事で、人間にその能力を使わせる。その分、人間はエクソシストという運命からは逃れられない。
誰に魅入るなど、その時の神の気分次第のようなものだ。

一方の黒神は、魅入ることは同じだが、使い勝手が全く違う。黒神は白神を裏切った神。
魅入るのは、世界滅亡へと進めるための駒を作り出す事意外には目的はない。
〈憤怒〉、〈憎悪〉、〈殺気〉などと言う、ものに対しての感情を持つ人間を魅入る。

白神に魅入られてしまったエクソシストは、黒神を祓滅——邪悪なるものを祓ってその神を滅ぼすためにいるので、
世界を救うなどと言う綺麗事で片付けてもそれは一理あるので否定はない。
正義の味方。そんな古臭い呼び名でも事実上そうなっているのだからそうだ。

                              マリオネット
しかし、黒神に魅入られてしまった人間——通称〈操り人形〉は世界滅亡への駒の一個。
黒神によって操られて、嫌々ながらも人間を殺し続ける殺戮マシーンの様なものになってしまう。
ただでさえ、〈憤怒〉、〈憎悪〉、〈殺気〉というものに対し敏感だった者がそれをするという苦痛はない。

しかし、彼女——シャルナはその黒神を魅入った。すなわち、乗っ取った。
つまり、被害者だったはずの彼女が市長を殺したというのが普通だったはずなのに、
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極度の憎しみから、実の父親だった市長をその憎しみを利用し黒神を魅入った。
被害者は加害者になり、普通で言う被害者を殺した容疑者になった。

そう、言いたいのだ。青年の隣で浮く、白神は・・・・・・。

「今の状況で他の意見があるなら言え。すぐに、可能性は消される」

白神は、その低いトーンで静かにそう言うと青年のほうにその顔、白い仮面を向けた。

「・・・・・・・・・・意見は、思いついたら言いたかった」
「だから甘いな、お前は」
「放っておいて欲しいと何度も言ったぞ、俺は」
「・・・知らないな」
「お前・・・・・・!」

青年の言葉を嘲笑って白神は、青年を馬鹿にする。
その光景を目にし、シャルナは眉を厳しく寄せて二人を睨む。

「貴方達は私を馬鹿にしているのですか?」
「・・・別に」

凛としたソプラノでシャルナは言うが、青年は興味なさそうに返事する。
その態度が、言葉が気に入らないのか、シャルナは目を伏せてこう言った。

「やはり貴方達は私を馬鹿にしています。
分かったのでしょう? 私は黒神というものに魅入られたはずの操り人形だという事を。
ですが、私は黒神を魅入って乗っ取りました。私には黒神と同じ能力があるのです」

淡々と、彼女は言う。
そして、右手を前に差し出して黒神独特の黒いオーラを体全体から出すとそこには鎌が現れる。

「私の内にいる黒神は、鎌を操って黒炎で貴方を襲います。
 貴方の白神、いや白神の操り人形と言っても過言ではない貴方はどうしますか?」

そう言って、シャルナは鎌の切っ先を青年へと向けて彼女の周りに黒炎を出した。


                                 続く