ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 神に魅入られし者。 ( No.19 )
日時: 2010/04/22 23:09
名前: 金糸雀 ◆FXzmrZiArI (ID: w3Re2V0V)

              †  第一章 「黒神の創った者」 第七話  †



「・・・君はもう死ぬから教えてやるよ。


                                     クローン
                     ___俺が、黒神の創った複製だから」


「____!!!!!!」


その言葉を聞いてシャルナは言葉を失った。
まさか、白神に魅入られた人間と戦っていると思っていた自分が、


                 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
                 黒神という裏切った神の複製などという存在だと言うのだから。


「・・・・・・・・う、嘘でしょう?」

                              「だと思うか?」

恐る恐る聞くシャルナに微笑みながら青年は問う。その表情はどこか寂しげに見えた。
そして、青年は破壊刀を両手で構えなおすと一気にシャルナとの距離をつめた。


「___!!!」

                               「遅いね」

不敵に微笑んで青年は破壊刀を突き刺す。視界に赤い血飛沫がはいる。
破壊刀はシャルナの右腕を突き抜けた。
鎌を左手で持ち替えて破壊刀をはらい、シャルナは右腕を押さえて飛び退く。
右腕は押さえても押さえなくとも、だらんと力なくぶら下がっている。
シャルナはそんな右腕を一瞥すると鎌を左手で持ち直し真っ直ぐ青年を見つめた。


                  
                         クローン
                 ・・・・・・・・・・・・・・黒神が創った複製?



「有得ないわ」

小さく呟いて、先ほど言った事を否定する。
最初に言われた時に驚いたものの、別に信じる気にはならなかった。
ただ、どこか寂しげで哀しくて、心の底が揺らぐようなそんな表情を無視は出来なかった。

「まだ動く気かい? もうやめたらどうだ。目的は達成しただろ?」

青年はシャルナの動かなくなった右腕を見ながらそう言った。

「目的? 何のことです」
              
          「・・・市長を殺したじゃないか」

「・・・・・・あれは別に目的ではありませんけど」

                「・・・あ、そう」

眉を寄せながら言うシャルナに対し青年は素っ気無く答えた。
そして、もう一度しっかりと破壊刀を構えた。
シャルナも鎌を構え、鎌から黒炎を出し始めた。

「・・・・・・・・・・・・・なぁ」
「何ですか?」

二人とも構えた状態で不意に青年がシャルナに声をかけた。
シャルナは構えを解かずに凛とした声で聞いた。
とは言え、右腕が使えない状態なのでどこか焦っているようだった。

「黒神を乗っ取って後悔してないか?」

「・・・・・・何故?」

不意に青年がこんな事を言ってきたのでシャルナは一泊ほど遅れて聞いた。
魅入られたのだから逆に乗っ取ったまでだ。
後悔するもなにも抵抗できずに一回魅入られたせいで今こうなっているのだ。
ただ、父親を憎んでいたという事実だけを胸に黒神を乗っ取った。

「私は黒神に魅入られましたけど父親をとても憎むあまり乗っ取りました。
 だから、父親を殺せたのですから後悔などしません」

凛とした、とても強気のその言葉に青年は笑みを浮かべると、そうか、と呟いた。
怪我をしているにもかかわらず、毅然と立つその姿勢。
少し焦ってはいるものの、恐れをまるで感じない様に真っ直ぐと青年を見つめる瞳。

「良かった。これで後悔などしたら、哀しいだけになってしまうからな。
 少しでも楽しく、嬉しく感じたのならば死んでもまだ許せるだろう?」

「・・・まぁそうですけど。



                      ・・・・・・・・・・・・私は死にませんからね」


そう言って彼女は微笑んだ。

そして、地面を蹴り上げ青年に向かって鎌を振り下ろす。
青年は破壊刀で受け止めた。


                   

            __________キイィィン!!!!!!!!!


二人の少しの決意を秘めた小さな戦いは終盤を迎える。




                                続く