ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 神に魅入られし者。 ( No.25 )
日時: 2010/05/27 22:42
名前: 悠 ◆FXzmrZiArI (ID: w3Re2V0V)


          第二章  「エクソシスト」   第二話




通称は<リタプレ>——帰る場所と呼ばれるエクソシストが集う場所。
黒神を滅ぼすエクソシストの拠点——(家として使ってもいるが)それは各地にある。
そのため、<リタプレ>は区別をするために色々な名称で呼ばれている。


ここ、シェイプという大きな港と鉄道が通っている町にも<リタプレ>はある。


   バスケットブラックゴット
その名も<黒神の籠>。


他の<リタプレ>の者が皮肉を込めて付けた名だったが、今では知らない者はいない。


             バスケット
だが、その名が長いため<籠>としか呼ばれない。
もちろん、この<リタプレ>の所属する者もこうとしか呼ばない。
理由と言うほどの理由はなく、ただなんとなくその名が執着してしまっただけだ。
それに、頭の賢いエクソシストはいないので、そのまま流れていってしまっているだけだ。


しかし、エクソシストは最強——(最狂かもしれないが)である。
                    マスター
<リタプレ>の中でも一番強いものを主人と言うが、その主人は23歳という若さでなった。
他の<リタプレ>は年老いて頭の堅い者ばかりだが、ここは違う。

とは言え、やはり変わり者ばかりなので異例なものだった。




シェイプの<リタプレ>は中世の城のような感じの大きな建物だ。
ただ、中はそこら辺にある大きな居酒屋といった感じである。
大きなテーブルが数十個並んでそこに3人掛けのイスも数十個。
一番奥にはカウンターがあって、そこでは何人かの女性のエクソシストが料理を作っている。

まぁ、これは好きでやっているものだからボランティア的なことだが。

その隣では見覚えのある後姿。


「ジェッジ、任務終了だ」


その後姿に青年は声をかけた。

ボサボサの少し長い黒髪に透き通るような緑色の瞳。
そして、手には何時も通り酒瓶。
この人こそ、ここの主人。ジェッジ・フォード。只今、32歳。独身。彼女募集中。


「なんだ、お前にしては時間かかったな」


大人の男性というわりには、渋くない声でジェッジは言う。
ちなみに、若さ作りに精を出しているわけではない。普通にこれだ。

主人になって9年、エクソシストとしての腕は誰もが認めるほど。
そして、このギルドで最強——(最狂とも言えるが)だ。

ただし、何事に関しても感想は軽い。
いつも適当に、いつも流して全ての事を放っておいて、後で上に怒られている。
——が、気にしない。
青年はいつもそんな自分達の主人を見下して、馬鹿にして、尊敬している。
先ほど見た光景と同じく酒瓶を差し出してが、それを丁重に断って、


「・・・まぁ、色々とあったんだ」


と、青年は言う。
まさか、死体処理なんかで丸三日かかっとは、言えなかった。


「・・・まぁいい。聞いてみただけだ」

「なら聞くなよ・・・・・・」

「そう言うな、ウェザン」


普通ならば、もう少し早くに青年とずっと呼んだ彼を紹介しなければならなかったはずだ。
この主人公と言ってもおかしくない位置にいるこの青年を。

その彼の名は、ウェザン・ジェイストーム。16歳にして、この<リタプレ>の最強候補の一人である。
性格は冷静でありながらも途轍もなく面倒臭がり。
そして、エクソシストは黒神と<操り人形>を滅ぼさなければならないのに、それを躊躇ってしまう。


               ____これを、優しいと言うか?


いや、違うな。

    クローン
黒神の複製という存在のため、同類を消す事にいちいち心を痛めてしまうのだ。




____と、まぁ。とりあえず、こんな人間——(一応、黒神でもあるが)を知っておいて欲しい。



ジェッジは、咳払いをして改まった顔でウェザンに声を掛ける。
何時もは、寝ぼけたようにボーっとしているのに何時になく真剣な顔だったのでウェザンは眉を寄せた。


「この話を知ってるか?」

「・・・知るわけない」

                       、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
もちろん、これはその話自体をではなく、どの話かジェッジの言葉では分からないから言っただけである。
もともと、冷静であっても面倒臭がりなのでここ最近の妙な噂などを思い出すという事もしない。
だから、少し呆れたように、知らないと溜息混じりに言った。

そして、ジェッジは知らねぇのか、などと言いながら——(これはジェッジが悪いのだが)
もう一度、改まった真剣な顔で言ってくる。


「________世界最悪の黒神だ」

「・・・・・・世界最悪、だと?」

「そうだ」


ジェッジは頷く。

これもまた、ウェザンは知るわけもなかった。
だいたい、黒神や普通の神(白神とも言うが)の詳細の事など主人かもっと上しか知らない。
なので、そんなことを言われてすぐに分かるはずもないのである。


「・・・自称、そう名乗っているらしい。その他の事は不明だ」

「・・・・・・・・・・・・駄目じゃねぇか」


イスを立って歩きながら言うジェッジにウェザンは振り向き様に言う。
そして、こちらに振り向いて、



          、、、、、、、
「・・・・・・・それが、動き出した」


と、静かに言った。


                          続く