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Re: 神に魅入られし者。 ( No.27 )
日時: 2010/07/05 23:17
名前: 悠 ◆FXzmrZiArI (ID: WylDIAQ4)

          第二章  「エクソシスト」   第四話




「そういやお前ってあの魔女の祓滅だったよな?」


何時の間にか、ウェザンの真正面のイスに座っていたジルバは酒の入ったグラスを持ちながら言った。
まぁ、酒はいつも常に携帯しているジルバなのでそこに追求など面倒な事はしない。
そして、ウェザンは紅茶の入ったカップを持ちながら、そうだけど、と呟く。


「魔女って事は、女だったんだろ?」

「・・・魔女と言う文字は何と言う字で出来ているか知ってるか?
 知らなければ誰かに聞いてこればいい。さ、聞いて来いよ」

「・・・・・・馬鹿にしてんのか」

「別に」


明らかに馬鹿にした口調で言うウェザンは平然とまた、紅茶を飲む。
ジルバは一瞬眉を寄せたが、すぐに平然とした顔に戻り、酒を飲んだ。
そして、それはどうでもいいんだけど、と前置きをしてから今度は真剣な眼差しで話し始めた。


「さっき、ジェッジが言ってた話を魔女のいた場所で聞いたか?」


さっきの話とは勿論、世界最悪の黒神が只単に動き出した事だけだが。


「・・・あいにく、魔女意外は全滅だったからな」

「そりゃ、処理が大変だったな。・・・・・・あぁ、だからか。いつもより帰ってくるのが遅かったのは」


からかう様に、ジルバは少し笑いながらグラスを持ってウェザンに言う。
それを無視し、ウェザンは席を立ちジルバを無言で見下ろす。

そして、そのまま扉を開けて外へと出てしまった。

残されたジルバがウェザンの無言の抗議の意味を考えていると、ロイジがウェザンが出て行った扉を指差した。
興味なさそうにしていたが、ロイジはずっと話を近くで聞いていた。


「どうかした?」

「いや、なにも」

「どうだか」

「・・・放っておけ」


そう言ってジルバは酒を飲んだ。
しかし、グラスの氷が溶けて酒の味が薄くなっていたのだろうか。乱暴にグラスを置いた。


「俺はウェザンのことを言ったんじゃねぇーよ。・・・お前を馬鹿だな、ジルバ」

「・・・・・・・・・・・・あぁ?」


いきなり馬鹿と言われ、ジルバは数秒置いてからロイジを睨んだ。
ロイジは馬鹿にしたような、呆れたような顔をしてジルバを見下ろした。


「ウェザンは、一応黒神なんだ。だが、白神が魅入ってしまったからエクソシストをしている。
 いや、魅入ったではなく、仕方がなくそうなったと言っていたな、白神は。
 それは十分熟知してんだろ? あいつは、黒神や<操り人形>を祓滅するのを毎回躊躇している」

「同種だからだろ」


隣に立つロイジを見上げ、ジルバは適当にそう呟く。
しかし、ロイジは眼を伏せて首を振った。そして、こう続ける。


「ジェッジとウェザンの会話を以前聞いたことがあるんだけどな。どうもそれだけじゃないみたいなんだ。
 まぁ、黒神が白神の力で黒神を祓滅するんだから幾らか支障があってもおかしくないけど」


ロイジはカウンターでまだ酒を飲んでいるジェッジの方を見ながら言う。
何を考えているのかジルバやロイジにも分からない主人、ジェッジ・フォード。
ただ、その実力だけには敵わない。


「だが、あいつはこの<リタプレ>の最強候補だ。何があってもそれは変わらない」


ジルバは何時になく、真剣な顔でキッパリと言うがまたもやロイジは首を振る。


「分かってないな、お前。・・・・・・・と言っても俺も最近何となく感じて、全く確証なんてないけどな」

「何がだよ」


ロイジはあたりを少し見回してからジルバの隣に座り、静かに言う。
そして、一応誰にも言うなよ、と前置きしてから語り始める


「あいつの白神の能力は、『エレメンタル』。この世で、二つの神と同等の力を持つ四大元素の四精霊の力。
                               デストロイ
そして、ウェザン自信の持つ能力は、黒神の魔刀『破壊刀』。破壊するためだけの漆黒の刀だ。
黒神と白神の能力を持ってしまっているウェザンは、反発して拒否し、消し合う能力を上手く融合させている」

「・・・それぐらいなら俺も知っている」

「・・・・・・・・・全員知ってるけどな」


真顔な顔をして言うジルバに、呆れながらロイジは溜息混じりに言う。
この二人は昔から仲がよく、任務(と言うより、クエストみたいな感じなのだが)は二人で行っている。
しかし、どちらかと言うと、ジルバは結構後先考えず行動し、ロイジは考えて動く方である。
真逆な性格の二人は、体を使うか、頭を使うかで役割分担をしていると言っても過言ではない。

今回は、その頭のいいほうが役に立っているらしい。


「まぁいいや。・・・で、ウェザンは二つを融合させて神々の頂点と言われているよな?
 だが、それは間違っているらしいんだ」

「あっそ・・・・・・・・・・・・・・・・・。って。マジか!?」


意外に大きいなリアクションだったので、ロイジは慌てて静かにするよう促した。
ロイジが静かに喋っていたのに、ジルバが大声を出したせいで全員にこちらを向かれた。

はぁ、と溜息をついてロイジは席を立ち、また今度話すよ、と言って去って行った。


「・・・何だってんだよ、一体」


と、言いながら自分が座っているテーブルの上に置いてある残ったものを見た。
それは、さっきウェザンが飲んでいた紅茶の入っていたティーカップとロイジが持っていた酒の入ったグラス。
あとはもちろん、自分のグラス。そして、少し考えた。

ここは、もちろん<リタプレ>だからと言っても、飲み物を飲んでも金は要る。
しかし、二人はいない。いるのは、自分だけだ。


「・・・まさか」


いや、多分そのまさかである。
しかしながら、まんまと二人に奢らされるはめになるとは。なんと面白い事だろう。


「あんの、馬鹿ども」


いや、それは貴様だろう。ジルバ。

なんて声が、隣にいたジルバの白神から聞こえてきそうな感じであった。