ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 神に魅入られし者。 ( No.8 )
- 日時: 2010/04/18 14:56
- 名前: 悠 ◆FXzmrZiArI (ID: w3Re2V0V)
† 第一章 「黒神の創った者」 第四話 †
「結構普通の家だな」
青年はポツリと呟いた。
市長のお嬢様と言われるのだから当然大きい屋敷だろうと思っていたが意外と小さかった。
「まぁ小さい街だからこれで妥当だろ」
白神は他の家と比べながら言った。
ただ、普通の大きさでも雰囲気は全然違う。言葉で表せない寒気を感じるほど気味が悪い。
しかし、これでここに魔女はいるという確信は持てた。
「中にいると思うか?」
「・・・・・・気配はあるからいると思う」
青年の問いかけに少し探ってから白神は多分、と返事を返した。
そして、少し大きめの門を開け雪が薄っすら積もった庭に入る。
何日も手入れがされてないせいか、木は枯れて雑草が伸びている。
青年がふと、視線を左右に移した先にあるものがおちていた。
周りの雪は赤く染めあがり、少し異臭がする。
「何だ、あれ」
「・・・・・・見りゃ分かる」
青年が聞くと少し間をおいて白神が低い声で言った。
草木などで青年からは見えていない。
だが、白神は宙に浮いていたし気配という鋭い感覚でそれが何か分かっていた。
白神の反応を青年は不思議に思いながら乱れた草木を掻き分け奥へと進んだ。
「__________!!」
真っ白な雪の中に赤く染めあがった雪があり、その中央にそれはあった。
何日も放置されたそれには新しい雪が降り注ぎ、何とも言えぬ光景があった。
「・・・・・・ここの市長か」
「おそらく」
、、、、、、、、、、、、、、、
バラバラになっていた市長は、見るも無残な姿であった。
斬り方がとても綺麗なため人間技とは思えない。
・・・・・・では、誰の仕業か。
声に出さなくとも二人は分かってしまった。
そして、突如家から物凄い気配を感じ二人は振り返った。
「俺らに気づいたか」
「そりゃ、黒神がいるからな」
「・・・・・・一応、神だもんな」
青年は玄関の方へ静かに忍び寄ると思いっきり扉を開けた。
すると、そこには一人の子供が立っていた。
クリーム色の綺麗な長髪に同じような色の瞳。
「シャルナ・フェリーフか?」
青年が静かに聞いた。すると、静かに頷いて顔を上げた。
シャルナは何かに歓喜を感じたのか、笑みを浮かべていた。
「こいつ、何で笑ってるんだよ」
「・・・・・・さぁ、知るかよ」
シャルナは青年に近づく。青年は少し後ずさりながら、彼女を見つめた。
彼女は庭を指差すと凛としたソプラノの声で言った。
「あれを、見ましたか?」
「・・・・・・何をだ」
「あれですよ、先ほど見たでしょう?」
「・・・・・・市長か?」
「えぇ」
実の父親を〈あれ〉と言いこの物静かな言い方。
母親と家政婦はさておき、あれは黒神の仕業ではない。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
黒神に魅入られたシャルナ・フェリーフ、彼女自身の仕業だ。
「お前がやったのか?」
「えぇ、そうですよ」
彼女は淡々と答えた。そして、隣にいた白神はある事に気づいた。
黒神の気配が全くしなかった。家全体からはするのに黒神自体の気配が無い。
となると、考えられるのは一つだが納得がいかない。
不可能ではないが、可能だとしても子供がそんな事するなど。
「おい、餓鬼。一つ、質問する」
白神はシャルナに言った。
「なんでしょうか?」
「黒神はどこへやった」
「なんのことですか?」
「とぼけるなよ」
「・・・・・・おい、何のことだよ!」
青年は話の内容が理解できず、白神に向かって叫んだ。
「市長は黒神に魅入られた彼女がやったんだろ!?」
「いや、違う」
白神は首を振って彼女の方を向き静かに驚くべき事を口にした。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
「魅入られた彼女が逆に黒神自体を魅入り市長を殺したんだ」
続く