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Re: 〜ZERO〜3話更新♪ ( No.12 )
日時: 2010/02/27 13:41
名前: 遊太 (ID: EWcIN/Ij)

4話   『覚醒』

A棟4階 廊下

「これから、お前らには人質になってもらう。」
ガリレオはそう言うと、まず友里を引っ張り出し頭に銃を突きつける。
「静かにしてろ。ほかのクラスは授業中だろ?もし、騒げばこいつの頭を撃ちぬいてやる。」
ガリレオのその言葉に、友里は恐怖で震え始める。
駿や幸介には何もできない。
「ついてこい。」
ガリレオは友里を連れて階段を下りる。
駿たちもそのあとに続いた。
「お前らの目的なんだよ・・・?」
幸介が前を歩くガリレオに聞く。
「関係ない。黙ってろ。」
幸介は不貞腐れ、後ろにいるハーシェルに視線を向ける。
「前を向きなさい。」
「いや・・・あんたどっかで見たことが・・・」
「黙って前を見てろ!!」
ガリレオが幸介の髪を引っ張りながら耳元で叫ぶ。
幸介は振り払い、クマの後ろに隠れた。
7人はその間に3階に着き、駿たちはガリレオの顔を見る。
「B棟に移動する。ハーシェル、後ろを頼むぞ。」
「了解。」
ガリレオは渡り廊下につなぐドアを開けた。
渡り廊下は壁が窓張りで、外から丸見えだ。
今の状況とは反対に、外は平和だ。
「行くぞ。」
ガリレオは渡り廊下の真ん中まで歩くと、振り向き駿たちの方を見た。
「よし。お前はここから飛び降りろ。」
「え?」
友里はその言葉に唖然とした。
「お前にはここから飛び降りてもらい、校舎の人間の引き付け役となってもらう。」
「お、おい!!」
駿と幸介が止めさせようとする。
が、ガリレオは友里を窓に押しつけ頭に銃を突きつける。
「やめろ!!」
「さよならだ・・・」
ガリレオは引き金を引こうとしたその時。

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

駿の体が真っ赤な炎に包まれ、その炎がガリレオを襲う。
「なっ!!」
友里はガリレオを振り払い、駿たちの方へ走る。
ハーシェルと幸介たちは駿の姿を見て後ろに下がる。
「て、てめぇ・・・・何者だ・・・」
ガリレオは窓に寄り掛かる。
駿はガリレオに向かって両手を前に出し、一言つぶやいた。

「死ね」

その言葉と同時に、駿の両手から真っ赤な炎がガリレオにぶつかる。
ガリレオは叫ぶ暇もなく、一瞬で黒こげとなった。
熱で窓は溶け、ガリレオの遺体はそのまま下へと落下した。
「駿!!」
友里が駿の名前を呼ぶと、駿は我に返って炎は消えた。
駿は自分の体を見て愕然とする。
今のは・・・何だ・・・?
「そ、そんな・・・!!」
ハーシェルは5人を置き去りにして、そのままB棟へ走っていなくなった。
幸介、道夫、孝明、友里は駿に近づく。
「大丈夫か?」
「あぁ。今のはなんだ・・・?」
「分からない。」

「超能力・・・?」

孝明がつぶやいた言葉は、全員の耳に届いた。
「へ?」
「いや。前にパソコンで見たんだ。パイロキネシスだよ。」
「ぱ、ぱいろねき・・・しす?」
幸介が片言で首を傾げながら言った。
「うん。炎を使える能力者のことをそう言うんだ。でも、そんな人がこの世にいるなんて・・・」
「現に目の前にいるじゃねえか。」
「で、でも・・・」
幸介と道夫は駿に近づき、尊敬のまなざしで見る。
「やっぱ駿はすげぇよ!!昔のことも今もすげぇ。」
「駿は・・・すごい・・・」
3人が戯れている中、友里が駿たちに言った。
「ねぇ、これからどうするの?」
友里の言葉に、駿と道夫と幸介は目を合わせる。
「一応、さっきのハーシェルとかいう女を追いかける?」
駿がそう言うと、幸介が‘そうだ’と何かを思いついた。
「そういえば、あの女どっかで見たと思ったらテレビだ。」
「て、テレビ?なんでまた・・・?」
孝明が尋ねると、幸介は話を続けた。
「このまえよ、女子空手日本大会っていうのがあって、あの女は確か準優勝した水本成美だ。」
幸介の言葉に全員が驚く。
「な、なんでそんな人が銃持ってここに!?」
「何か理由があるんじゃねぇの?よっぽどな。」
「とりあえず、追いかけよう。」
5人は駿を先頭に、B棟へと向かった。

しかし、5人はまだ気づいていなかった。

駿の覚醒が、自分たちの運命を変えるとは______

**********

ハーシェルはB棟4階に上がり、奥の第1音楽室に隠れていた。
自分の失態がばれたらミスターⅩに殺されるのは間違いない。
もしかしたら、クルーエルがこっち向かっているかも。
ハーシェルは小刻みに震え、窓からA棟を見る。
すると、職員室前にクルーエルとミスターⅩの姿が見えた。
しかし、ガリレオが死に自分が逃げたのがバレルのは時間の問題。
裏切りとみられ、自分のことを警察に言われる。
「どうすれば・・・・」
逃げたとしても、宛てが何もない。
捕まれば、当然刑務所いきだろう。すでに死者が出ているのだから。
「戻れば殺されるかもしれない。逃げれば殺される・・・。どうすれば・・・」
ハーシェルは涙を流し、自分の失敗した行動に絶望を感じた。

**********

萩原中学校 正門前 

学校の前を歩いていた本原慶介は手帳を見ながら悩んでいた。
今年で勤務5年となるが、スリルがない事件ばかりだ。
「こまったもんだねぇ〜。」
「本原警部!!」
本原の後ろから、同じ部署で務める石田雄之助が走ってきた。
石田は眼鏡にキッチリとしたスーツ姿で刑事に雰囲気を出している。
が、まだ1年も経たない新米刑事だ。
「東京県警に戻りましょうよ。」
「あぁ。分かった・・・・ん?」
何気なく、中学校の方を見ると、薄い黒い煙が空へ延びていた。
「石田。あれはなんだ?」
本原が指をさしながら石田に言う。
石田は目を細めて煙を見た。
「なんで・・・しょうかね・・・?」
「行くぞ。」
「え?」
本原は正門を抜け、そのまま校舎へと向かって行った。
「待ってくださいよ!!」
石田は走って本原を追いかけた。