ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 〜ZERO シーズン1〜 5話更新♪ ( No.16 )
- 日時: 2010/03/06 19:50
- 名前: 遊太 (ID: EWcIN/Ij)
6話 『本当の計画』
A棟 1階 職員室
ミスターⅩは窓から外の景色を眺めていた。
先ほどの爆発で、生徒と職員がグラウンドに避難している。
「ミスターⅩ。」
ゼロが職員室の扉を開けながらミスターⅩの名前を呼んだ。
ゼロはミスターⅩに近づくと、ため息をドッとついた。
「琴庭の覚醒は成功した。けど、クルーエルとハーシェルはすでに学校の外に逃亡。ガリレオは死んだ。残りのメンバーは退去させた。」
ゼロがそう言うと、ミスターⅩはニヤリと笑う。
「そうか。クルーエルたちの行動は範囲外だが、まあいいだろう。我々も退去するとしよう。」
ミスターⅩとゼロが職員室の扉に向かおうとすると、一人の男性が職員室に入ってきた。
男性は黒い帽子を深くかぶり、足もとまである黒いコートを着ている。
帽子のせいで顔は見えないが、声がまだ幼い。
ミスターⅩは男を見ると動きが止まった。
「ファルコン・・・。」
「もう退去するのか?」
「本当の計画は成功したんだ。目立った行動は反対に悪いからな。」
ゼロはそう言うと、先に職員室を後にした。
「ファルコン。お前も早く逃げろ。」
ミスターⅩは職員室を出ながらファルコンの耳元でつぶやいた。
一人なったファルコンは、職員のデスクを蹴り飛ばす。
デスクは音をたてて床に転がった。
「これで、終わると思うなよ・・・・」
**********
B棟 3階→1階
駿、友里、幸介、道夫は避難する生徒に紛れて外に避難した。
「くそっ!!孝明・・・」
幸介はクルーエルに殺された孝明の死に悲しむ。
勿論、ほかの3人も孝明の死に悔んでいた。
「これからどうする?」
幸介が駿に聞く。
「とりあえず、学校の外に逃げよう。ほかの人には悪いけど・・・。」
「それなら、一番学校から近い駿の家に行こうよ!!」
友里が提案すると、3人は頷いた。
4人は隠れながら正門から逃げた。
道路はも先ほどの爆発を不審に思い集まる人々がいる。
4人は人を掻き分け、車道に架かる歩道橋を上った。
歩道橋のちょうど中心に来ると、車道の向こうからサイレンの音が聞こえ始めた。
「消防車にパトカーだ。みんな、急ごう!!」
4人は歩調を速め、歩道橋を降りた。
その時、先頭を走っていた道夫が突然止まる。
「おい!クマ、早く行けよ!!」
「あいつ、怪しいぞ。」
道夫の指さす方向に3人は視線を向けた。
駿の自宅がある住宅街の中に、黒い帽子にコートを着た男が入って行った。
それを見た友里はつぶやく。
「まさか、敵じゃないよね・・・」
その言葉で駿は、一瞬最悪な光景が脳に広がった。
「俺の家は知らないはず・・・だけどもし・・・」
「でもよ、真人はいないんだろ?弟の。」
駿は幸介の言葉で昨日の夜のことを思い出した。
‘参観日・・・か・・・’
今日は真人の参観日。
しかし、真人は両親が死んでから参観日の時は昼には早退する。
「今の時間は・・・」
駿は学校の方を振り向いた。
校舎に付いている時計は、12時ジャストだった。
「そんな・・・まさか・・・・」
駿は自宅に向かって走り始めた。
**********
数分後
4人は駿が住む家の近くまで来ていた。
駿は焦りと絶望で地面に派手にこける。
「おい。大丈夫か?」
幸介が手を貸そうとすると、駿は無視して走り始めた。
「これ以上家族を失いたくない・・・・。」
駿はその言葉を呟きながら角をまがった。
すると、青い屋根の琴庭家の家がようやく見えた。
何の変化もない。無事のようだ。
4人は何の変哲もない駿の家を見て安堵の息を漏らした。
その時だった。
ボォォォォォォォォン!!!!!!!!
駿の自宅の2階が轟音とともに炎をあげて燃え上がる。
「なっ!!」
4人はその光景に愕然とし、動きが止まった。
「そんな・・・家が・・・・。母さんと父さんの遺骨が・・・・」
駿は家に向かって走ろうとしたが、幸介と道夫に止められた。
「あぶねぇぞ!!今は無理だ!!」
「離せ!!真人がいるかもしれないんだぞ!!」
幸介は道夫に駿を頼むと、燃え上がる駿の家に走って行った。
「クマ!!離してくれ!!」
駿がもがくが道夫の力は強くビクともしない。
「駿!!落ち着いて!!」
友里が駿の両肩を持って叫ぶ。
しかし、駿はクマの両手を振り払い自宅へ走って行った。
**********
燃え上がる自宅に駿は絶望を感じ、足を止める。
原因はもう一つあった。
「幸介!?」
自宅に入ってすぐの庭に、幸介が倒れていた。
その隣には先ほど見かけた男が立っていた。
「お前が・・・」
「琴庭駿か。弟を殺せなかったのは残念だ。その代わりに、こいつを殺そう。」
男はそう言うと、両手に見たこともない黒い煙の集合体を集める。
「さよならだ。原田幸介・・・」
「ぬぉぉぉぉぉぉ!!!!」
男の後ろから、道夫が現れ首をつかむ。
「うぐっ!!」
道夫はそのまま男を塀にたたきつけた。
「ぐっ!!てめぇはすっ込んでろ!!!!」
男は道夫に触れると、道夫がその場から忽然と消えた。
「クマ!?」
男は平然と立ち上がり、駿と気絶している幸介に近づく。
「今度こそおしまい・・・・」
ウゥーーーーー!!ウゥーーーーー!!
男が近づく瞬間に、パトカーの音が聞こえてきた。
男は舌打ちをし、駿を睨む。
「また近いうちに会うだろう。復讐はその時だ。」
男はそう言うと、その場から一瞬で消えた。
***********
翌日
『昨日未明、東京都私立萩原中学校で理科室が爆発する事故が起きました。同時刻には萩原中学校にテロリストが侵入していたらしく、目撃はされていませんが警察は全力で捜査しております。この事件で、職員の本郷武蔵さん(32)が死亡。身元不明の焼死体も発見されおります。さらに、生徒の大熊道夫君が行方不明となっております。』
病室にいる駿はテレビの電源を切った。
ベットには幸介が寝ている。
友里はその隣でリンゴを剥いていた。
「真人君は?」
「親戚に預けておいた。」
友里はリンゴを剥き終ると、ため息をついた。
「この後、事情聴取だよ。親もうるさいし・・・。」
友里は窓から空を見る。
そして、2人の運命を変える歯車は動き始めていた。
**********
同時刻 東京湾
明け方の東京湾は、船が3隻出港しているだけで閑散としていた。
港にあるコンテナ置き場にあるひとつのコンテナの中にある人物がいた。
「うぐっ・・・」
右半身を大やけどしたクルーエルは逃げる際に保健室で奪った包帯を巻いていた。
「くそ・・・。くそ・・・。」
クルーエルは先が溶けた日本刀を握ると、怒りが込みあがる。
「琴庭駿、この恨みは必ず・・・」
クルーエルはそう言うと、コンテナから出てどこかへと消え去った。