ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ——吟遊詩人レミの物語—— ( No.2 )
- 日時: 2010/02/27 13:36
- 名前: 白魔女 (ID: Eda/8EBL)
—— 序章 ——
——Ⅰ・赤毛の少女
森の奥の小屋に、一人の少女が訪ねてきた。それは、まだ十三・四歳であろう、若い娘。夜もかなりふけているというのに、少女は一人だった。
そんな少女を見て驚いたのは、森の奥の小屋に住んでいるソレットだ。ソレットは、娘のカトリーヌと共に、この小さな小屋に住んでいた。
「夜遅くにすみません……一晩だけ、泊めてはもらえないでしょうか」
赤毛の少女だった。目は、漆黒だ。それを抜かせば、どこにでもいる女の子。そんな子が、いきなり泊めてくださいなんて。ソレットは戸惑ったが、考えるより先に口が動いてしまった。
「外は寒いでしょう。中へお入りなさい」
これでは、泊めてあげると言っている様なものだ。仕方ない、泊めてあげよう……ソレットは、少女の肩に手をかけながら思った。
少女は、小さな体の背中に、大きなリュックを背負っていた。それも、かなりの重さだ。これをずっと背負って来たのか。ソレットは、少し首を傾げたが、気にしないことにする。
そんな母とは裏腹に、娘カトリーヌは楽しげに少女に話しかけた。
「あたしと同い年じゃない? うわあ、嬉しいな」
カトリーヌは、ベッドに寝たきりのままはしゃぐ。
「こんな森の奥に住んでるから、他の人に会うことなんて、滅多にないの。それも、子供になんて全く!」
「……そうなんだ」
少女はそう言うとニコッと笑った。ソレットもそれを見て安心する。子供がこんな時間に尋ねてくるのもおかしいが、所詮、子供だ。
その後、三人は夕食を食べ終え、ソレットは片付けを始めた。その間、二人は色々とおしゃべりをしていた。
「あの……さぁ」
カトリーヌが重々しく話しかける。
「これ、私の代わりに持っててくれないかな」
相変わらずベッドの上で寝たきりのカトリーヌは、自分が見につけていたペンダントを、はずし、少女の手にのせた。薔薇の形をした、ペンダントだ。
「ありがとう……可愛いね。でも、どうして?」
「えっ……いや、ふ、深い意味はないんだけど……」
しどろもどろで答えるカトリーヌを、少女は目を細くして見る。そして小さく、はっきりと言った。
「カトリーヌちゃん、病気だよね」