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Re: Jack the Ripper ☆ジャック・ザ・リッパー☆ ( No.27 )
日時: 2010/03/06 18:56
名前: 白魔女 (ID: Eda/8EBL)



——Ⅲ——赤い百円玉


「あっ」


「ん?」

 徹が声を上げたので、蜜柑が寄ってみると、そこのは百円玉があった。

「あぁ、百円玉じゃん。なーんだ」
 蜜柑がその場から去ろうとすると、徹がすそを掴んだ。


「なーんだ、じゃねぇよ! どうするんだよ、これ!」
「どうするって、言われたってねぇ」
「何ナニ、どうしたの」
 会話を聞きつけた由愛も、寄ってきた。
「あー、百円玉。いいなあ。徹が見つけたの?」
「よくねえよ!」
「どうしてぇ? もらっちゃえばいいじゃん」
「いやいや。それはダメだろ」
「なんでよ、星野。別にいいでしょ、ネコババしたって、誰も見てない」

「それだと俺の良心がだな——」

 男のくせに肝っ玉の小さいというか、良心がどうたらと言っている時点でもう、男としてどうなのだろう、と蜜柑は思った。

「そんなんじゃ、世の中食ってけないぞ?」
 ニヤニヤしながら、由愛が茶化すと、徹は顔を赤らめた。

「べ、別にいいだろ! なら、笠山にやるよ、これ!」
「えー! なんで私!」
「欲しいんだろ! ほら」


 地面落ちていた百円玉を拾い上げる。すると、徹は悲鳴をあげて百円玉をまた落とした。


「どどど、どうしたの星野!?」


 徹が、百円玉を掴んだ右手を見せた。人差し指と親指に、赤い液体がついている。


「——血?」
「触ったら、ぬとっとして……」


 さすがにこれは肝っ玉の小さい、では言いくるめられない。蜜柑はまた地面に落ちた百円玉を観察してみた。


「血だ。やっぱり、この百円玉、血がついてる」

「えーっ、なんでよぅ!」
 怯え始めた由愛に、蜜柑は落ち着いて話しかける。

「大丈夫だよ、なんか、動物の血とかなんかだよ。例えば猫——」


「猫っ!?」


 その言葉に、由愛は大きく反応した。

「どうしよう! もしかしたら、チャビの血かもしれないわっ! あぁ!」

 また、由愛がヒステリックになってしまった。蜜柑はあきれる。

「落ち着いてってば、そうとは断言できないでしょう」
「そそそ、そうだよなぁ」

 手についた血を必死に服で擦り取ろうとしている徹も、言う。


「そ、そう……だよね」
「そう、さ」
「そうに決まってる」

 という三人も、頭の片隅では嫌な予感がしていた。


 ——もしかして、これって人の——。


 そこまでで蜜柑は考えるのをやめた。というより、考えたくもなかった。