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Re: Jack the Ripper 切り裂きジャック ( No.29 )
日時: 2010/03/07 16:56
名前: 白魔女 (ID: aAyW2lUS)



——Ⅴ——猫の案内は狂気の前触れ


 三人は慌ててその場所へ駆け寄った。家と家の細い隙間を、由愛が指差す。


「あ・そ・こ」


 小さな声で由愛が言う。しかし暗すぎて、蜜柑たちには見えなかった。徹がカバンから懐中電灯を出し、明かりをつけると確かにそこには、あの写真のチャビがいた。

「チャビ! こっちおいで……」
 狭いので、こっちからあっち側に行く事は出来ず、由愛が必死にチャビに呼びかける。


 やっとこさチャビが動いたかと思うと、チャビは私達の横をすり抜け、路地に出、どこかへ行こうとした。

「待ってよ! チャビっ」
 三人はチャビを追ったが、チャビは速度を上げることはなかった。まるで、私達についてきて欲しいようだ。


「何がしたいんだ、あの猫?」
「私が知るはずないじゃない」


 チャビは、すぐ近くの公園の中に入った。寂れていて、滅多に人が入ってこない公園だということを、三人とも知っていた。ブランコや、滑り台、砂場があり、どこにでもある公園だが、公園の周りには木が生い茂っていて、外から公園の中は見えない。木が遮ってしまうのだ。だから、日の光もあまり公園には入らず、いつも薄暗い。

 三人は木の後ろに隠れた。チャビが気を緩めた瞬間に、捕らえる作戦だ。チャビの足音がなくなって、チャビが足を止めたのがわかる。三人は目で合図し、一斉にチャビに飛びかった——いや、飛び掛ろうとした。



 徹が悲鳴をあげ、ドスっと転んだ。何かに足を取られたらしい。しかし、徹が蹴躓いたモノを見て、三人は硬直した。

 暗い公園でも、それが何なのかはよくわかった。が、自分の脳がそれをあれだと決めるのを怖がっていた。——そんなわけがない。あるわけない……。しばらく沈黙が続く。

 しかし、三人は由愛の高い悲鳴でハッとした。由愛はその悲鳴が自分の叫んでいるものだと、わからないようだ。長い長い悲鳴が終えると、蜜柑は腰が抜け、ドスンと座り込んだ。やっぱり、あれなのだ。三人はようやくそれが何なのか悟った。



 徹がつまずいたモノは、人の死体だった。



 遠のく意識の中、なぜか蜜柑はその死体が笑っているように見えた。ぞっとするのと同時に、蜜柑は意識を失った。