ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Jack the Ripper ( No.5 )
日時: 2010/03/06 11:49
名前: 白魔女 (ID: Eda/8EBL)


——Ⅰ——




 そして、蜜柑と徹にとっては憂鬱な時間が始まったのだった。由愛と言えば、チャビの話ばかりで、例えば——「チャビはね、すっごい寂しがり屋で、一人でいると、プルプル震えるの! だから、いつも私が近くにいてあげないとね……」——など、どうでもいいことばかりだ。「寂しがり屋」なんて、ウサギじゃあるまいし……。「プルプル震える」って、どんな状態だよ! と内心、あくまで内心、蜜柑は突っ込んだ。徹と言えば、由愛の話は全く聞いていない様子で、黙々と、紙に写真を貼り付け、文字を書くという作業をやっていた。すぐ終わらせて、帰りたいのだろう。しかし、そんな簡単に帰らせてもらえるわけがないだろう、と蜜柑は踏んでいた。何年、由愛と付き合っていると思っているのだ。


「それで、チャビったらね——」

 また、由愛が話を始めようとした。すると、徹がそれを遮った。



「終わった」



 一言。たった一言だけ、そう言った。徹の顔にくっきりと「帰らせてくれ」と書いてある。しかし、それに気づいてか気づいてないのか、由愛は返事をした。

「あぁ、そう。あたしも終わったし、貼りに行こっか」