ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 禁忌現実-The Fantasy to Exist- ( No.39 )
- 日時: 2010/03/23 18:41
- 名前: 付喪 ◆29ayQzCLFo (ID: YpJH/4Jm)
〆12
いつもなら見知らぬ少女、しかも金髪に翠眼の外国人がいきなり部屋に入ってきたらまず驚いて事情聴取となるだろう。だが今の刀哉はベットに腰をかけ、呆然と少女がこちらに近づいてくるのを待つ。罪悪感で自暴自棄になってしまったらしい。
——その罪悪感の原因は?
ふと脳裏にそんな問いが浮かんだが、すぐに打ち消した。
「初めまして、と言っておきましょうか」
“双翼の闇”は刀哉の正面に立って言う。礼儀は礼儀、刀哉も自分の名を名乗ろうと口を開こうとする。
が、しかし、
「貴方は名乗らなくて結構です、泉井刀哉」
「…………」
“双翼の闇”に先に答えられ、刀哉はそのまま黙り込んだ。一体何者なのか——さっき入り込んできた時の発言から察するに魔術関連の、しかもとある銀髪少女と関連のある人物のようだ。
刀哉は“双翼の闇”の様子を伺ってみる。“双翼の闇”も人様の家に家宅侵入したとはいえ、常識くらいは心得ているらしい。刀哉が家宅侵入した、その上個人情報まで知っている少女に対し慌てる事も怒る事もしないのを不思議に思っているのか、刀哉を見ながら小首を傾げる。そして“双翼の闇”は言う。
「貴方は個人情報を知られていて不思議にさえ思わないのですか?」
「……一応思ってる」
「そうですか。……私が何者か名乗った方が宜しいですか?」
「……魔術師とかいう奴か?」
「よく分かりましたね、正確に言えば情報屋と殺し屋を兼ねている魔術師ですが」
“双翼の闇”の発言に刀哉はピクリ、と興味有りげに“双翼の闇”を見る。殺し屋の魔術師——言葉で言うだけでも嫌な予感しかしない。何故自分の家にそんな少女が来るのか——その前にこんな小さな少女が、本当に殺し屋なのか?
ここに来て初めて家宅侵入者の少女に疑問を抱く。そんな刀哉の疑問さえも“双翼の闇”は見抜いたらしい。
「私は本物の殺し屋ですが、それが?」
一般人に言ったら冗談もほどほどにしろと笑われそうな事を、当たり前の様に言う少女。刀哉も普段ならそうかもしれないが、今回ばかりはどこか調子がおかしい。
「……へえ、じゃああれか? 俺を殺しにでも来たのか?」
「いいえ、貴方如きを殺してもナイフの無駄ですので」
「……やっぱそうだよな。なあ、そ……ん?」
「何を言いたいのか分かりかねます」
「……やっぱ本名教えてくれ」