ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

零の巻 夜行唄 ( No.1 )
日時: 2010/02/28 19:55
名前: キョウ ◆K17zrcUAbw (ID: JFNl/3aH)

 都の人々は語る。
 連日連夜のように、都を徘徊する異形のことを。そして、夜行の晩は必ず紅い月が登り、異形を目撃した者は魂を浚われてしまうという。
 人々は見たこともない異形を連想し、か弱い子供達に語って聴かせた。
 漠然とした異形の姿。親に聴かされた唄を受け、子供達は黄昏時になる夕暮れを背に、輪を作って歌い出す。


六道輪廻 奥深く
 修羅に留まり 幾星霜
  邪魂に染まりしその 形状スガタ
   夜行を逝くは——

     “羅刹の”——……


 人々は畏怖の念を込めて、異形の名を、

『羅刹』

と呼んだ……