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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 戦場には死しか残されず… ( No.1 )
- 日時: 2010/03/02 20:17
- 名前: 牙 ◆CJat/Z2hH6 (ID: NWU2GU14)
〜プロローグ〜
当時、どういう状況だったのか俺ははっきり覚えていない…。
ただ、怖くて、悲しくて…。
「カロン、レオン、ユウリを連れて、早く逃げろ…!
母さんと俺のことは構うな、良いな?
分かったら、早く行くんだ…!」
「父さん!?何言ってるんだよ?!」
俺は父さんに怒鳴った。
泣きながら母さんは、ユウリを抱き上げた。
「もうこれが最後…。
私はもう二度とお前たちを…。
レオン、ユウリをお願いね…?」
「意味分かんねぇよ!
皆で逃げるんだろ?
姉ちゃんを追う人たちからさ…そうなんだろ!?」
俺は皆を見ながら言うのに、ユウリ以外は顔を伏せたまま泣いていた。ユウリは理解ができる年じゃないから、ただ笑っていた。
「母さん、父さん、ごめんね…。
私なんかが存在しなければこんな事なんかに…。
…とにかく、私はこの子たちを安全な場所へ…。
最後まで親孝行ができなかった…。
償いはいつかするから…」
姉ちゃんが言う。
俺には意味が全く分からない。
当時、俺は八歳だったのだから…。
今なら分かる気がする…
「じゃあ…」
姉さんが父さんと母さんを交互に見る。
泣いていて、何も言えない母さんの背中をさすりながら、父さんは頷いた。
「よろしく頼むよ…。
ユウリ、レオン、そしてカロン…元気でな…」
姉さん達のやり取りに口を挟まなかった俺は、やっと、父さんと母さんに会うのはこれが最後なのだと悟り、この二人はこの世の人ではなくなってしまうのだ…と思った。
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