ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 熱血教師ト死神様 ( No.15 )
- 日時: 2010/04/09 15:38
- 名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)
第八話 秘密情報
不気味な少女に、伸びる白い手。
朝から妙な体験をした俺は複雑な気持ちで
教室に入る。案の定、誰もいない。
あるのは教卓の上にどっさり置かれた書類だけ。
俺は書類を広げる。
難しい漢字が並んでいて、読む気はしない。
だか気になる題名の書類があった。
『神呪病』『神通力について』—…。
「じんつー…りき。」
呟いてみて、思った。
どうしてこの学校にこんなものが?
俺は薄いほうの『神通力について』を
手に取りページをめくる。
…
—近年驚くべき特殊な能力を
持つ子供が数人発見された。
その特殊な能力とは人並み外れて運動神経が高い、
IQが高い天才的能力ではなく、自然を操る事ができる
神と同然の能力である。
その神と同じ能力を持ったものは、
『神の後継者』と呼ぶ。—
…
「はぁ…、『神の後継者』ねぇ…。」
次のページをめくってみる。が、
外国語がズラリと並んでいるので
黙って本と閉じる。
神呪病についての本を手に取ろうとした時、
窓から純と春の二人が入ってくる。
「あ、いたいた。」
「はょー高彦さん。遅刻ギリギリやったー。」
どっから入ってんだ、と突っ込む気になれない。
あの本を読んで、凶悪組織の秘密情報を
知ってしまったようだったからだ。
春は、純を押しのけ教室に入り
この本をめくり始めた。
「流石、先生とゆー方は。
こんなムズい本読んでんねんな。」
その言葉に食いついた純は急いで教室へはいる。
だが本を見た瞬間彼の顔が急に冷める。
「純、どないしたん。」
「いや別に。」
純は神呪病の本を手に取り本棚に無理やり押し込む。
そして猫のような鋭い目でこっちを睨む。
「誰に読めって言われた?本…」
「誰に…つうか、最初からココに…。」
息をのんだ。殺意のような冷えた空気が
教室いっぱいに広がる。
「…チビ五十嵐か。」
俺純に気にさわることしたかも、なんて
心配する俺をよそに純は席に着く。
「この学校にどんな秘密があっても、
逃げねぇって、誓うか…高彦さん。」
初めて純とあったときと同じ目だった。
怖くて殺意に満ち溢れてて…悲しげで。
「どういう…ことだ…。」
「その様子じゃ何もしらねぇんだな。」
呆れた顔で純は言う。
それを見て春はあわてだす。
「や…やめろや!
まだ高彦さんは来たばっかなんやし…。」
「来たばっかだからこそ言う必要があるだろ。」
頬づえをしている『猫』の目は
何か企んでいるようだった。
「『神の後継者』…。多分信じてくれないと
思うが、俺はあの風神様の血を引き継いでんだ。」
「風神…。」
俺が疑っているのを悟った純は
電球に向かって何かを投げた。
電球をまとっていたガラスは
粉々になって崩れてゆく。
「今投げたのはほんの少しの突風。
偶然なんかじゃない、俺は風使いだから。—」
足が、腕が、体が動かない。
俺はまだ夢を見ているのだろうか?…
「まだ信じてねぇのなら…もう1度証明してやる。
春、あの電球まだ使えるよな。電気があれば…。」
さっきの急に指を立てる。
春はうなずいて眼を閉じ、何か念じている様だった。
電球はバチバチと音を立て、
何事もなかったかのように光り始めた。
「春も俺と同じ、後継者だ。
雷をつかさどる…雷神様のな。」
純は今まで頬づえしていた手を見つめ出した。
「コレだから、今まで俺たちの担任した奴らは
全員辞めていった。気味が悪い、らしいからな。
…もう一度聞く。お前、最後まで俺たちの事…。」
「高彦は、最後まで見てくれる訳ない。」
ぴしりと、空気が凍る。
その声の主は北条だった。