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Re: 熱血教師ト死神様 ( No.16 )
日時: 2010/04/14 15:16
名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)

第九話  警告 

「…北条…?」

俺と春は声を揃える。

「信用できない。どうせすぐに居なくなるくせに。」

「北条、俺は逃げたりなんか…!」

「逃げなくても、消えちゃうくせに。」

北条は自分の足の先を見つめる。

「…この学校の裏を知ろうとしたら、
 生きて帰れない…。高彦はそれでいいの?
 どうしてこの学校に来た!死んでもいいのか!?」

北条の声は徐々に興奮していく。
純も下を向く。『学校の裏』…『秘密』…。
気になる言葉が俺の頭を駆け巡る。

「死んだりしねぇって、俺はそんなに弱く…」

—…「私は殺すぞ?」

肩の力が抜ける。
不意に殺女の声がよぎる。

「私は死神様の後継者…。
 お前を殺すなんて容易いことだ。」

何かを感じ取った純は北条を止める。

「紫堂!もうやめろ!
 死神はそんなことする者じゃ…!!」

その声に北条は落ち着き始める。

「…高彦には、私の気持ちなんてわからない。」

通学カバンを強く投げ捨て、
北条はどこかに行ってしまった。

「北条!」

俺は廊下に出て、北条を追いかける。
後ろから春の止める声が聞こえる。



 …

「待てって!」

やっと北条に追いつくと、
俺は彼女の片腕をつかんだ。

「なんであんな事…!」

北条は腕を振り抵抗する。

「うるさい、高彦…じゃなくて
 お前には関係ない!ほっといて!」

「放っておかるかよ。そんなことより、
 その包帯何なんだ!俺がいない間に何があった?」

北条の左目には黒色の包帯。
所々に難しい漢字が書きこまれている。

北条はハッとした。
あいている手で砂を掴んで
俺の目に向かって投げる。

「…ッ!」

俺の手から北条の細い手がスルリと抜ける。
うるんだ眼に映る北条は揺れていた。


      ○

何なのよ、あいつ。
放っておいてほしい、あいつだけには。

私は約束した待ち合わせの場所に着く。
それでも奴はいなかった。

—…納得いかない。
奴が遅れたことも、高彦が来た事も、何もかも。

小さいころからこの世界に不満を覚えた。
父さんは死んで、母さんから見放されて…

『死神の後継者』になってから
まわりがとてもどす黒く見えたのを覚えている。

『後継者』、『神様』。

そんな存在さえなければ苦しまなくて済んだはずだ。
私は死神だけど、神様が嫌い。

「よぉ、待たせたなぁ。」

「遅い…黒田。」

黒田は長い指で眼鏡を少し上にあげる。

「まぁいいじゃないか。
 今まで約束をすっぽ抜かした数は
 お前の方が多いのだからなぁ…。」

頭にくる、何なのよこいつ。

黒田が後ろを向くのを見計らって
私は自分の影の中に手を突っ込んだ。
泥の中に手を入れるかのようにゆっくり入り込む。

その中には死神様恒例の大きな鎌がある。
それを黒田の首に向ける。

「お前…調子に乗っていたら
 その首ブッ飛ばすぞ。これは警告だ。」

「いいさ、僕との契約が済んだら
 殺すなりなんなりしてもいいぞ…。」

『契約』、その言葉を聞いて鎌を降ろした。
「悪かった」と呟く。

また私は自分に負けた。