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Re: 熱血教師ト死神様 ( No.19 )
日時: 2010/04/30 16:06
名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)

第拾弐話 姉弟

     ○

中庭に出ると、紫堂は途切れ途切れに呟いた。

「…じゃ、私行くから…。
 えと…無理しないで、なんかあったら、言って。」

そんなに心配しなくたっていいのに。
俺は微笑んだ。どいつもこいつも。

紫堂は竹林の中に走って行った。
姿が見えなくなると、俺はそこに座り込んだ。

ヤンキーみたいに座って、
カバンからケータイを出そうとした。

カバンの中は新品臭かった。
そんなカバンの隅っこに
くしゃくしゃになっているプリントを見つけた。

「ぉ…紫堂に渡すの忘れてた…。」

俺はプリントを広げてみる。
『神呪病の予防について』…。
いやがらせかってほど、でかく書いてあった。
こーゆーのねぇよ、まじうぜぇ。

『神呪病』…その名の通り、
神様が人間を呪う感染病…。

凛もその病気を患った一人だって言われてる。
もちろん俺は認めてない。

一人で苛立ってると、髙橋が寮へ歩いていた。
タイミングのいい奴。

「髙橋—」

「あ、純。プリント渡してくれたか—?」

「ん。」

俺は適当に誤魔化した。
どうせ渡しても読まねーし。

「そだ、純って姉ちゃん居たんだな。」

急な事でいまいち聞こえなかった。
『姉ちゃん』?俺の?…

「『りん』て名前だっけ。すげぇ純に似てるな。」

「凜?あぁ、ソレは俺の妹…」

ハッとした。髙橋が言っているのは麟の事だ。
どうしてあいつがココに…。

「おい!そいつ、どこで見た!?」

「え、…あぁ、教室を出てすぐの廊下。」

その言葉を聞いてすぐに走った。
どうして麟が、ありえねぇ。

高橋がなにか言っている。
お構いなしで走り続ける。



「でてきやがれ!何の用だ、麟!!」

叫び声が廊下に響き渡り、
すぐにしんとした空気に戻った。

だが俺は知っている。
麟はこういう所に隠れるのが得意だ。
眼を閉じ、静かに身を固める。


風を切る音が、頭上から聞こえた。
麟お得意の氷柱だ。

ミサイルのように放たれた氷柱を避ける。
避けられた氷柱は向こうの壁に当たると
跳ね返ってまたこっちに向かって飛んできた。