ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 熱血教師ト死神様 ( No.24 )
- 日時: 2010/08/01 12:11
- 名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)
第拾七話 おもいでばなし
私は、ふいに呟いた。
「前に、坂出にいた時の事件。」
私がココに転校してくる前にいた中学校。
高橋もいた、中学校。
その話になって高橋はいつになく真剣に顔になった。
「大量に失神で倒れた生徒がいた事件。
そしてその加害者が私だと言われた、事件。」
思い出しただけで、拳に力が入ってしまう。
私の嫌いな子も、縁のない子も、親友も。
校内のほとんどの生徒が倒れた『坂出事件』。
「あの時、私は何も考えていなかった。
それなのに『神通力』が発動してしまった…。」
右手を開いて、私はじっと見つめた。
「いつ力が発動するか分からない、自分でも。
コントロールできないんだ。純や春みたいに。」
皆ができて、自分だけできない。
私が一番嫌な事で、私に当てはまっている事。
「だから、私はいつお前を殺すか分からない。
関わってて死んでゆくのも、時間の問題。」
私は右手で、背を向けたまま彼に手を振った。
「でも、あれは失神だし。今は全員回復して…!」
「…運がよかったんだ。私は過去に2人殺した…。」
小さい頃、父さんと姉『ざくろ』を殺した。
いつの間にか、私が…。
「特にざくろは私を恨んでる。
きっと憑いているから、お前も…」
「紫堂!高彦さん!」
救われた。もう少しで泣きそうだった所に、
春が首突っ込んできた。
「大変や!凜ちゃんが、…いない!」
「凜ちゃんが!?」
高橋は首をかしげている。
そうだ、こいつは凜ちゃんを知らない。
これはチャンスだ。
「りんって…?純の姉ちゃんの…」
「ちゃう!そっちは麒麟の麟で!
今言ってんのは妹の方のり…。」
私は純の腕を思いっきり引っ張った。
「時間がない、探そう!」
彼から逃げるように走った。
悪いけど、もう首を突っ込まないでほしい。
お前には…高彦には大切な人がいるんだもの。
○
「り…麟さん…。」
気がつくと、鉄のさびたにおいのする
暗闇に閉じ込められていた。
「やっと気付いたのね?やっぱアンタはグズだわ。」
頭に激痛が走る。
きっと、麟さんがわたしを足蹴にしている。
「な、何が目的なんですか…っ」
「アンタが持ってる能力、使わせてもらうだけ。」
「でも私、お兄ちゃん…じゃなくて
純さんみたいな神通力なんて…!」
麟さんが私の頭を強く蹴った。
「自分で気付いてなかったのぉ?ばーか。」
痛い、痛い痛い…!
暗い怖い、誰か助けて!
「アンタにゃ、目いっぱい働いてもらう。
助けを求めたって駄目よ。純は死んだ。」
それはあまりにもあっさりしていた。
『死んだ』。すんなり言われても納得いかない。
「私は見た。アンタのお兄ちゃんはもういない。」
追い打ちをかけられて、やっと分かっていった。
肩の力もだんだん抜けてゆく。
「どうして…なんてことを!」
「私が殺したんじゃないからね。殺したのは…」
私の耳元で、麟さんは呟いた。
「死神の後継者、北条紫堂。」—…