ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ─空想世界─  ( No.3 )
日時: 2010/03/12 21:48
名前: 羽鳥 (ID: p8.Ij.U2)

<第一章 壊れていく世界>

「幕末がね、個人的に一番好きなのっ。 すごく面白いのよ!」

わたしの親友である、夏目桜花が歴史について語っている。
今日は幕末について、なのね。 昨日は平安時代だったけど。

肩より少し長い綺麗な黒髪に、黒いフレームの眼鏡。
一見、頭良さそうな美少女に見える。
だが中身は大好きな歴史でいっぱい! な、桜花。

「ねぇ杏樹。 幕末といったら、何があるか知っている?」
「幕末ねぇ・・・・・・。 新撰組とか?」

わたし、乙宮杏樹はそう答えた。
肩につくくらいの茶髪に、二重の瞳。 これは自慢できる。
二重って、イイよね。

「ああっ、新撰組! そこ来ましたか、杏樹」
「近藤勇と土方歳三に・・・・・・」
「芹沢さんと沖田さんよっ! 始まりはね───」

はじまりました、桜花の歴史話。
最低一時間、最高五時間は語り続けるこの少女。
今日は新撰組について語るのね、桜花。

「そこで近藤勇を中心とする───」

ちなみにここは、放課後の教室。 わたしと桜花だけの空間。
桜花の歴史話に耳を傾けていると、突然誰かが教室に入ってきた。

「・・・・・・っ、乙宮と夏目か」
「あら、竜堂くん。 どうしたのかしら?」

入ってきたのは同じクラスの竜堂十夜。
少し可愛らしい顔に、茶色の髪をしたバスケ部の少年。
息が切れていて、走って来たようだった。

わたしの予想。
竜堂は桜花のことが好き、だと思う。

だって竜堂、よく桜花に話しかけるし。 仲良さそうに見えるし。
───二人とも、なんかお似合いだし。

「お、乙宮? どうかしたのか?」

急に竜堂に声をかけられた。 心配そうな顔をして。
少し頬が紅いのは、桜花がいるから?
走って来たから? バスケをしてきたから?

「なんでもないよ、竜堂。 どうして?」
「いやぁ、なんかありそうな顔してたから・・・・・・」
「あ、そう。 何もないから、大丈夫」

わたしはふいと、顔を桜花の方に向けた。
───竜堂がかなしそうな表情をしたのは気のせい?

「で、夏目はまた歴史の話でもしてたのか?」
「今日は新撰組よ。 私は個人的に大好きねっ」
「じゃ、俺も聞こうかな。 夏目の話」

すると桜花は嬉しそうな顔をして、再び語り始めた。

───このとき、無理にでも帰れば良かったのに。
あとから、わたしは後悔することになるのだった。