ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 私と船と大空と〜1-弐UP ( No.5 )
- 日時: 2010/05/19 16:53
- 名前: myself ◆IES8JQTB.6 (ID: rPXFyhjn)
2-壱
「んで、場所ってどこでしたっけ?」
悠里は呆れ気味に再度確認する。
「あー。この辺なんだが……」
宮火は地図を穴が開くぐらいに見る。
悠里はもう一度あたりを見回す。
なぜに、コウ何度も確認するかというと、あたりは村やその村に住んでいるはずの人々はもちろん、木さえ見つけられないからだ。
見えるのは——目の前に広がるのは——
ただただ白く輝く大地だけだった。
*
「悠里たち、大丈夫かな?」
白河キヨスが窓を見ながらハァと、ため息をだす。
ため息をつく度に窓が少し曇る。
「調査ぐらいなら、俺らが狩り出されてもいいんだけどな」
愛用の拳銃を磨きながら答えるのは刈谷 剋(カリヤ コク)で雑用班の班長である。
「それよりもさぁ、お前、いい加減ケーキ食わせやがれ」
刈谷は腹立たしそうに傍らで美味しそうにケーキ(しかも丸々一個)を食べている白河キサネの頭を銃で軽く叩く。
「うはぇ〜」
「意味分かんねぇよ」
もう一回銃で叩く。
さっきよりも少し強めで。
「うははぇ〜」
「さらに意味分かんねぇよ」
そんなやり取りをしている間にもケーキはどんどん減っていく。
「ケーキィィィイィィ!!!」
「ていうか、どんだけケーキが食べたいんだよ」
遠めで見ていたキヨスが軽くツッコム。
「んむぐ!!あと一口しか残ってない!!」
キサネは自分で自分の口を押さえながら言う。
「なに!!こうなったら最終手段だ!!」
そう言いながら刈谷は銃を構える。
「そうきましたか!でも、この最後の一口は渡しませんよ」
キサネはケーキの皿を抱えて袖口からサバイバルナイフを取り出す。
「だから何でそうなるんだよ」
キヨスは諦め半分な目で見る。
「いくぜ!!」
刈谷はキサネに向けて数弾を撃つ。
それに合わせてキサネはナイフを自分の前で軽く振るう。
するとキサネの目の前に大きな"口"が現れる。
するとその"口"が弾丸を飲み込む。
「ふふん♪私にそんな物は効かないぞ」
鼻歌交じりで最後の一口を口に入れる。
その様子を刈谷は見つめるだけしかできなかった。
そんなこんなでケーキ争奪戦は終了。
ていうか、話しずれてね?
*
「楽しそうですね、皆さん」
雑用班専用部屋の扉を少しあけて見ていた零里は隣で自分と同じことをしている久美に話しかける。
「確かにねぇ、ていうか、暢気だねぇ」
フッと久美は扉から目を離して自分が抱えている資料に目を落とす。
「私たちもサッサと資料届けてお茶にしよ」
「そうだね、今日は……チョコケーキでも作ろうかな」
零里は今日のオヤツを考える。
(チョコケーキ!!)
久美は心のなかでガッツポーズをする。
「ささ、サッサと片付けよ!!」
久美は少し急ぎ足で艦長室へ向かう。