ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: つくられもの ( No.3 )
日時: 2010/04/06 08:36
名前: クロウrerikku (ID: Fi5I.X3D)

第2話『オリジナルと俺と』


湊が創られて、半年くらいたった。
湊は、温室が好きだ。
薔薇、チューリップ、スズラン、ガーベラ、菊など……色々な花が見られるから。
湊はいつものように、温室のドアを勢い良く開ける。
温室には、いつも、湊しかいなくて、他の人はいなかった。
……けど、今日はなんか違った。
温室には、ラベンダーを眺めている、赤毛の少年。
赤毛に赤眼の少年は、湊にとてもそっくりだった。
顔も、身長も、こうして温室で花を眺めている事も。
湊が少年を見ていると、少年は突然湊の方を向き

「……ん? 湊?」

と、聞いてきた。
……俺、この人にあった事はないはず。
そう思いながら、湊は少年に尋ねた。

「……なんで、俺の名前知ってるの? ってか、誰?」

それを聞いて、少年は

「……俺の事、覚えてない?」

と、聞き返してきた。
覚えていない。全然覚えていない。
湊は、少年に1度もあった事がないし、見たともない。

「俺、緋勇 幽美、17歳。職業は、宝探し屋でーす!」

「……あぁ、オリジナルか。で、名前はなんで知ってるの?」

「博士に聞いたら、普通に教えてくれた。ってか、何その呼び方……」

……博士、いつの間に?
どうせなら、そのときに、俺もこの人に会いたかった。
湊はそう思いながら、ため息をついた。

「……どうした? なんか、変なこと言ったか?」

「いや、なんでもない。心配してくれてありがとう。オリジナル」

湊は、自分が心配されるなんて思っていなかったから、内心、びっくりしながら、そう言った。
この人は、なんで、俺を同等に扱ってくれるんだろう。
組織の人間からしたら、俺の存在なんて、空気みたいなものだ。
本来、いないはずの物だから。人間じゃぁ、ないから……。
湊がそう考えていると、幽美が

「また呼んだ……オリジナルって。名前、呼んでくれよ。どうせなら、兄貴って呼んでもいいぜ?」

と、笑いながら言った。
幽美の笑顔は、とても綺麗なもので、湊は思わず見とれてしまった。

「……じゃあ、兄貴」

「え? それで良いんだ。じゃ、これからよろしく頼むぜ、弟よ!」

幽美はそう言って、笑った。
湊もつられて、ケラケラと笑った。
温室では、二人の楽しげな笑い声しか聞こえなかった。