ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Lost. ( No.2 )
- 日時: 2010/03/14 22:46
- 名前: 獅堂 暮破 (ID: Bj.1bVbu)
№02 「久我」
「……は?」
最初に出た言葉はそれだった。
いやだって、いきなり契約だの言われて「はい、します」とか「いいえ、しません」とかそんな答え返せないだろう。
返せた奴を俺は尊敬するよ。
「契約って、何のだよ」
俺が問えば久我は少し悩むように顎に手を当てた。
「簡単に言えば、俺がこの世界で狩りを自由に出来るようにするための契約、かな?」
意味分かんねぇ。
いや、マジで。
ホント何コイツ、もしや電波か?
俺は目の前の久我を見つめながら、そんな失礼な事を考えていた。
「でも、簡単に言っちゃえば今の彪ちゃんの退屈でつまらない人生からは抜け出せるよ」
「!!」
その言葉に俺は思わず反応した。
それを見た奴は嬉しそうに笑っている。
いや、にやけている。
「何だか意味不明だけど、お前とその契約ってのをすりゃ、俺はこのつまらねぇ毎日から解放されんのか?」
久我はコクリと頷いた。
俺は唾を飲み込んだ。
つまらない毎日からの解放。
退屈からの救い。
それが今目の前にある、のかもしれない。
何もせずにこのまま、つまらない中にいるのは俺の主義じゃない。
かなり怪しい。
でも、
俺は……
「分かった。お前と契約、してやる」
久我は「よっしゃ」と拳をグッと握った。
そして久我が俺の肩に手をポンと置いた。
「ちょっとびっくりすると思うけど……」
「は?」
そう久我の顔を見上げようとした時には遅かった。
何かが唇に触れている。
まさか?
いやいやいや。
ここ、シリアス・ダークだし。
ありえねぇよな!?
でも、
これってあれだよな。
キス
男と?
俺が?
キス?
「っ」
次の瞬間痛みが身体を襲う。
しびれるような痛み。
足に力が入らなくなり俺の身体は支えを失う。
倒れそうになった身体を久我が支えた。
「おま、何……しやが、った」
眩暈に襲われ、視界が揺れる。
「ごめんねー、かなり驚いたよねー。でもこれが“契約”の第一歩なんだよ。“悪魔”である自分の血を相手の身体に侵入させるのが」
……悪魔?
ナニソレ、漫画かよ。
ありえねぇだろ。
この現代社会に? 科学の進んだこの世界に?
悪魔?
ヤベ。
なんかめっちゃくらくらしてきた。
「ちょ、彪ちゃん!? え、マジ!?」
久我が俺の名を呼ぶ。
すんません。
もう、なんかいろいろ無理みたいだ。
最後に見たのは焦る久我の顔。
そこで俺の意識は途絶えた。