ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Lost. (なんか危なくなってきた;; ( No.3 )
- 日時: 2010/03/15 17:48
- 名前: 獅堂 暮破 (ID: IurYi9vr)
№03 「証」
懐かしい夢をみていた気がする。
あれは俺がまだ十歳の頃。
お袋も親父も元気でそして俺もごく普通の小学生だった。
普通に手をつないで歩いたり、喧嘩をしたり。
本当に、
どこにでもいるような普通で、そして幸せな家族だった。
しかしそれも崩れ去る。
飛び散る真っ赤な血。
肉の裂ける嫌な音。
骨の砕ける音。
両親の叫び声。
そして俺を見つめる瞳。
「彪……お前、だけ……は」
親父がクローゼットの中の俺に優しい瞳を向ける。
「生き残れ……」
誰に、何のために二人が殺されたのか、
それは六年経った今でも解明されていない。
最初は俺も必死に手掛かりを探していたが、今はもうそんな事すらしなくなった。
ただ虚しくなるだけなら、何もしないほうがいい。
そう考えた結果だろうか。
「——や。彪ちゃん?」
名を呼ばれ俺は薄っすらと目を開く。
真っ白な天井、それに消毒薬の鼻を突くにおい。
ここは、学校の保健室か?
そう思っていると目の前にいきなり久我が現れた。
突然の出来事だったため俺は見事にベッドから落ちてしまった。
「うー……。んだよ、今日はマジで厄日かよ」
俺はこの時、あの久我との出来事もてっきり夢かと思っていた。
でも、目の前にいるのは久我本人。
夢じゃ、ないっぽいな。
……いっそ夢であってほしかった。
「彪ちゃん!? 大丈夫?」
久我が心配そうに手を差し伸べる。
俺は素直にその手に掴まって起き上がったが……。
あれ?
そう言えば、コイツ俺にキスしやがったよな?
あれ、夢じゃないんだよな?
「あのさ。さっきの、あれ。何だった訳?」
俺は奴から手を離し軽く不機嫌そうに問う。
「あーあれ? 説明したじゃん。あの時、俺は自分の唇を切って、血を彪ちゃんの身体に入れた。つまり契約をしたんだよ」
そう言えばそんな事言っていたかもしれない。
俺はまだ半ば警戒心を見せつつ彼を見つめた。
「……腕、見てごらん」
そう言われ俺は自分の左腕に目をやった。
「はぁ!?」
そこにあったのは黒い大きな模様。
蝶と黒い逆さの十字架が描かれていた。
しかも擦っても落ちない。
「んだよこれ!!」
俺が混乱して半分泣きそうになっていると久我は楽しそうに笑って答えた。
「契約の証、みたいな感じ。ほら、俺の右腕にも同じのあるでしょ?」
確かに奴の腕にも同じ模様があった。
刺青のようにも見えるが、それとは少し違う。
どちらかと言えば痣、の部類に入るか。
「詳しい事は後で話すよ。とりあえず、教室行かない? 今、五校時目だよ」
その言葉に俺は急いで靴を履き、保健室を飛び出した。
「ただでさえ俺は勉強ヤベーのにどうすんだよ!!」
これも何もかも、
久我 伊月、お前のせいだぞ!!