ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Lost. (なんか危なくなってきた;; ( No.4 )
- 日時: 2010/03/19 21:35
- 名前: 獅堂 暮破 (ID: QYDGIf3B)
№04 「悪魔」
「マジもう無理。俺、留年しちまう」
俺はお昼休みの終わりを告げるチャイムの中、猛スピードで教室へと向かっていた。
「ちょっ、彪ちゃん早!! 待ってよ」
後ろでは久我が俺の後を追っている。
そういえば、同じクラスだったか。
「確か五校時目は……橋本の科学。アイツ授業参加しねぇと評定下げるんだよな」
俺はチャイムが鳴り終わると同時に教室へ入った。
幸い生徒達は騒がしく、橋本もまだ来ていないようだ。
「はぁ……」
俺はため息を落とし自分の席に着いた。
窓側の一番端の席。
俺は今の自分の席が好きだった。
青空が見えるから、とかそんな純粋な理由じゃない。
一、居眠りがバレない。
二、いざという時ベランダから脱走可能。
三、隣の席が男子のため女子と話さないで済む。
このクラスの女子は俺を見るたび顔を赤くしてキャーキャー騒ぐ。
出来れば俺は静かに過ごしたい。
そのため、隣が男子であるこの席が好き、という訳だ。
「彪ちゃん。早いよ、足。早過ぎるよ」
「……」
問題発生だ。
隣、コイツだった。
どこかで見た事ある顔だとは思っていたが、同じクラスの隣の席だとは。
厄介だ。
基本俺は人との関わりをあまり好まない。
クラスでもあまりというか、全く話さない。
そんな俺の隣が、コイツかよ。
神様。無理です。
本当にもう限界です俺は。
「彪ちゃん? 聞いてる? 無視ひどいって」
俺は聞こえないふりをしつつ、窓から裏庭の大きな桜の木を見つめた。
満開の桜の木からはピンク色の花びらが散っている。
穏やかな風景がそこには広がっていた。
ああ、このままこの風景の一部になれたらどれほど楽か。
俺はきっと人間に生まれるべきじゃなかったんだ。
そんな馬鹿らしい事を考えていた。
「……ん?」
あれ?
今、なんかありえない光景が目に入ったような気がする。
桜の木の頂点に、人間がいる。
いやいやいや。それはない。さすがにない。
あの巨大な木の頂点に人間が登れる訳がない。
しかも二人もいやがる。
「……ついに幻覚が。俺、疲れてるんだきっと」
俺は必死に自分にそう言い聞かせた。
じゃなきゃやっていけない。
「彪ちゃん。俺と同じ匂いのする奴が近くにいる。つまり分かるよね? 悪魔がいるって事」
あーやっぱりそんな感じになっちゃう訳?
俺は騒がしいクラスの中で遠く明後日を見つめた。
「橋本、今日休みだから自習だってー」
クラス委員がそう伝える。
その言葉に久我と目を合わせた。
(確かめに行こう)
(やだ)
そうアイコンタクトで会話する。
しかも成り立つという驚き。
しかし無理やり腕を掴まれグイグイと教室の外へ連れ出された。
「多分仲間だとは思うけど、一応確かめないと」
久我が顎に手を当てそう言う。
「俺は自分の事だけで精一杯だ。契約とか、しちまったからある程度は協力しようと思うけど……」
「詳しい事、話してくれなきゃ俺も何も出来ねぇ」
久我は少し考え、また俺の腕を掴み歩き出した。
「一緒にくれば悪魔の事、君の役目、いろいろ分かるよ」
俺はその言葉を信じ、おとなしく久我の後について行った。