ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re:  Lost. 【№05 up】 オリキャラ求む!! ( No.12 )
日時: 2010/03/22 14:56
名前: 獅堂 暮破 (ID: QYDGIf3B)

№06 「天使」

「何このありえねぇ光景……」
俺の口から始めに漏れた言葉はそれだった。
今まで半信半疑だった久我の言葉が確信へと変わっていく。
目の前で繰り広げられるありえない光景。
俺の頭はもうそろそろパンク寸前だった。
「彪」
呆然としていると急に声をかけられ俺は思わず肩をビクッとさせた。
「彪はさ、覚醒まだ出来ないの?」
「は?」
急に覚醒だの何だの言われても分からない。
俺は間抜けた答えを返してしまった。
「そりゃそうか。ついさっき契約したばっかでしょ?」
俺はコクリと頷いた。
「……じゃ、俺が教えてあげようか。彪」
その時の恢吏の表情は嬉しそうに見えた。
俺は久我と環さんに目を向ける。
覚醒というものをした環さんはさっきに増して強くなっているように見えた。
状況を把握していない俺にでもそう見えるくらいだ。
きっと今の久我の状況は思っているよりずっと辛いはずだ。
こんな奴に協力するつもりはなかったけど……。
ここまで首を突っ込んでおいて引くなんて卑怯な事もしたくはない。

「恢吏……教えてくれ」

恢吏はニコ、いやニヤッと笑みを浮かべた。
「いいよ。教えたげる」
俺はゴクリと唾を飲み込んだ。
「久我の本当の名前、それを呼んでやればいい。たったそれだけだよ」
久我の、本当の名前?
久我伊月じゃない、名前?
考えても分からない事は考えるもんじゃない。
俺は大きく息を吸い込んだ。

「久我!! お前の名前、教えろ!!」

今まで出した事ないんじゃないかと思うぐらい大きな声でそう叫んだ。
隣では恢吏が腹を抱えて笑っていた。
「彪、お前サイコーだよ。今までこんな契約者見た事ない」
ちょっと腹に立つが今はそれは置いておく。
久我もクスクスと笑っていたが、俺に目を向けて言う。

「クラン、クラン・クロスだよ」

クラン、それがコイツの本当の名前。
そして俺はまた大きく息を吸い込む。
「クラン!! 覚醒しろ!!」
そう俺が叫ぶと目の奥が、いや、身体が熱くなるのを感じた。

「覚醒、成功だね」
俺の瞳は久我と同じ紅に染まっていた。
そして久我の背中には黒い翼が広がる。
「一発で覚醒成功とか、波長合ってんのかな」
久我は嬉しそうに笑って見せた。
なんか、俺既にこの状況に馴染んでしまってないか?
……自分の状況把握術に感謝だなこりゃ。
戦いがヒートアップしてきた、その時だった。

「古々、あの馬鹿達を止めなさい」

聞いたことのない声に俺は後ろを向いた。
「なっ」
後ろに立っていたのは二十歳ぐらいの男と女子。
女子って言っても背中にあれ、あの、なんつーのかな、羽? 
「了解しました、マスター」
少女はそう返し、久我達の下へ飛び立つ。

「戦いを終了しなさい、悪魔」
少女が二人の頭に小型の拳銃を突きつける。
これじゃあどっちが悪か分かんねぇよ。
純白の羽を背負った少女が拳銃突きつけてる光景って、何か滅茶苦茶シュール。
「厄介な奴が着たもんだよ」
恢吏が爪を噛みながらそう言った。

「よりによって、木枯 古々(コガラシ コフル)と新崎 汐(シンザキ ウシオ)に出会っちまうなんて」