ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Lost. 【№07 up】 オリキャラ求む!! ( No.19 )
- 日時: 2010/03/26 19:08
- 名前: 獅堂 暮破 (ID: QYDGIf3B)
№09 「父親」
その後俺は理解し難い話を聞かされていた。
まぁ、現に俺はありえないものを見てしまったわけだから、信じてはいるが。
今、俺の脳内は混乱と整理で手一杯だった。
ちょっと内容を整理してみた。
一つ、悪魔の他に政権争いに参加している種族は、天使と死神の三種族である。
二つ、現在の状況は久我達が圧倒的に負けている。
三つ、契約者の役割は三種族の持つ、本来の大きな力の制御と本来の力の覚醒。
「……混乱してきた」
だってあまりにも非現実過ぎる。
漫画やアニメでよくある話の主人公になった気分だ。
まぁ俺には熱血主人公のようなやる気と元気はないが。
「まあまあ。少しずつ理解できるって!! 俺もそんな感じだったから」
恢吏が俺の肩をポンと叩きそう笑顔で言う。
……なんかいろいろ癇に障ることは多いけど、悪い奴ではないみたいだ。
久我、恢吏、環さん、古々、新崎。
笑っているその顔を見ていると奴らが他の人種とは思えない。
「……一応、よろしく」
俺が小さな声でそう言ったのを聞いた五人は嬉しそうに笑って見せた。
久しぶりだった。
こんなに明るい気持ちになったのは。
両親が死んでから、なんだか生きているような感じがしなくて、ずっと心に穴が開いていた。
少し、ほんの少しだけどその穴が塞がっていく様に思えて、俺は何年かぶりに笑みを浮かべた。
「!?」
そんな事を考えている時だった。
ひどい頭痛が俺を襲い、身体の力が抜けていく。
「っ、なん……だ」
俺は地面に膝を落とし、頭を抱えた。
「彪ちゃん!?」
久我が慌てて俺に駆け寄り倒れかける身体を支えた。
恢吏達も突然の出来事に驚いているようだった。
「う……あ、っ」
頭痛は治まるどころか痛みを増して俺を襲う。
意識が朦朧とする中、見えたのは五人の慌てる顔。
ぼやける視界の中、はっきりと移る人の姿が久我の後ろにあった。
それは俺の大切な人の姿。
「お、やじ……」
俺と同じ長い銀色の髪を一つに結い、俺と同じ灰色の瞳で見つめる。
それは幻覚と言うにはあまりにリアルで、
俺は薄れていく意識の中、父親の名を呟いた。
「……日向、シト」