ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Lost. 【№09 up】 オリキャラ求む!! ( No.20 )
- 日時: 2010/03/27 10:03
- 名前: 獅堂 暮破 (ID: QYDGIf3B)
№10 「藍」
突然頭を抱え倒れる彪。
俺は倒れかけた彪の身体を支えた。
その身体は外見以上に軽くて自分の腕を疑う程だった。
「彪ちゃん!!」
俺が呼びかけても口に出すのは一つの名前。
「シ……ト」
何度もその名を繰り返す。
「シト? 恢吏、シトって聞いたことない?」
俺は聞き覚えのあるその名前に疑問を抱いた。
シト。日向シト。
日向ということは、恐らく身内の名前、いや父親の名前だろう。
倒れかけた時、親父と呼んだのを聞いた気がする。
「シト……!! 伊月、シトって俺らのライラスさんの契約者の名前だっ!! まさか、彪は」
その続きを聞かなくても分かった。
彪は、ライラスさんの契約者、そして俺らを纏め上げた張本人。
日向シトの息子。
でも、彼は随分前に亡くなったはず。
頭の中が混乱し出す。
ライラスさんの契約者日向シトに日向彪、そして俺ら。
何かで繋がっているのは間違いないだろう。
そして彪が倒れた事も偶然ではない。
今、俺らの中で何かとてつもない事が起こっていうる。
「でもまずは」
環さんが口を開いた。
「彪をどこか休める場所に連れて行かなくては」
確かな意見だ。
意識を手放した状態の彪を春とはいえ、外に長時間いさせるのはまずいだろう。
だが、長話のせいで学校はもう終わってしまっているし。
病院に連れて行くのもどうかと思う。
一番良いのは彪の自宅に連れて行くことだが……。
残念ながらここにいる俺達はついさっき出会ったばかりで家の在処など分かりはしない。
「どうするかぁ」
俺は脳をフル回転させるが良いアイデアは出そうにない。
その時だった。
「ん? そこにいるのは彪か?」
大人の男の声に全員が声の聞こえた後ろを向く。
そこに立っているのは黒髪、黒目の男性だった。
水色のTシャツに黒のパーカーを羽織って、俺らの少し後方に立っていた。
彪の、知り合いだろうか。
「どうしたのコイツ?」
男性は近くに寄りそう尋ねた。
「え、あの、えーと。どちら様で?」
俺は少し焦りつつもそう訊いた。
「あー俺? 俺は崎野 藍(サキヤ アイ)だ。彪の兄貴代わりってところかな」
藍さんはそう言ってひょいっと彪を抱き上げた。
「家、連れて行きたいんだろ? ついて来なよ。仕方ないから家まで案内してやる」
俺達は嵐のように現れたその崎野藍にとりあえずついていく事にした。
彪の人脈は案外広い事に今気付かされた。
藍さんは「コイツ迷惑かける奴だな」なんてボソボソ言いながら道を進んでいった。