ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 機械騎士—knight— ( No.5 )
日時: 2010/03/15 09:54
名前: right ◆TVSoYACRC2 (ID: zuIQnuvt)
参照: http://noberu.dee.cc/noberu/gazoutoukou/src/file192.jpg

プロローグ

—ヘブン軍、ナイト格納庫にて—

自分の後ろで一つに束ねた紅色の髪が風になびく。
少し掻いた汗で、黒と白色のパイロットスーツの中が湿っていくのを感じる。
「ありがとうございました」
まだ十五、六歳ぐらいの栗色の短髪で、新人用の水色のパイロットスーツを着た少年は、照れたような表情で、俺に頭を下げてお礼を言った。
別に、お礼をされるほどのことはしてはいない。むしろ、しないで欲しい。

人を殺すための技術を教えているようなものだから。

今、彼とやっていたことは『ナイト』同士の模擬戦だ。戦いながら、モニターを通じて、敵を倒すコツや命取りになることなどを教えていた。彼から誘いがあったのだ。
『敵からみんなを守る方法を教えてください』と。
この『ヘブン軍付属学習院』の中でこんなにも熱血な生徒は見たことがなく、感心するほどの熱心さだったが、それが時に迷いにもなる。彼は、戦えないタイプだろう。今後が心配だ。
「……覚えておいて欲しい」
「はい」
「迷ったらお終いだ……。だから、迷うな」
少年は不思議そうに、俺を見つめ、何かを言いたそうだった。
「……え?」
どうしてと問われる前に、俺はこの場を去った。

ジャーナリストとして戦争に行き、この世を去った父のことを、彼は思い出す。

「……父さん」

どうやら俺は、

『殺す方』になるかもしれない。

そんな気がするんだ。

——そして彼は天を仰ぐ。

空は、何も知らない無垢な少女のようで。