ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 機械騎士—knight— ( No.6 )
- 日時: 2010/03/15 10:58
- 名前: right ◆TVSoYACRC2 (ID: zuIQnuvt)
- 参照: http://noberu.dee.cc/noberu/gazoutoukou/src/file192.jpg
第一話[平和だった]前半
—日本太平洋沿岸部・ヘブン軍所有港、神奈川港—
軍艦がいくつも停められている軍所有港。だいぶ昔に在った、東京ドームというドーム約二百個分は軽々収まるだろう広さ。広くても、此処には軍艦数隻と小さな建物ぐらいしかない、ほとんど何もない場所。周りは森で囲まれてている。模擬戦闘には打って付けだ。
彼ら二人のナイトが夕日によって照らされ、港には大きな二つの影が写る。まるで人が二人、互いを見据えているよう。
『どうします? 雨崎少尉?』
今俺は、第一前衛部隊隊長兼作戦考案副長の杉村ルーファ中佐と模擬戦闘を行っていた。一戦目は彼の圧勝だった。そして今はリベンジの二戦目。杉村中佐に勝てばいいのだ。勝つだけで。
コックピットの右上にあるモニターには彼の、凛とした姿が映っていた。釣り上がっている口角、怪しげに俺を見つめる海の底のような暗い青い瞳、それほどがっちりとはしていないが、それなりに細い体。その体はその瞳とは正反対の空のような明るい青と草原の草のような明るい緑に雲のような白色のカラーで染められているパイロットスーツを身にまとっている。ヘルメットでよくわからないが、金色の髪が汗のせいだろうか、とりあえず少しだけ濡れていた。こちらも同じく汗を掻いている。あまり動かないものの、熱いのだ。
神経を研ぎ澄ませ、ゆっくり深呼吸をする。……さっきの言葉、俺を挑発しているようにも聞こえた。できるだけ、無視をしておこう。
彼の言葉には模擬戦闘中、耳をあまり貸さないことにしている。杉村中佐は相手を言葉で惑わすことが得意だからだ。彼は、戦闘向きではなく、心理戦と作戦考案、指示向き。しかしそれでも強い。
友幸の戦闘用人型ナイト、ドラゴンナイトの血の色に近い赤色の頭部が、夕日によって黄金に輝く。どちらとも動こうとはしない。
彼のナイトの装備は、昔の西洋の騎士ようなオリハリコン制の剣と盾、オリハルコンソードとSガード。Sガードの内側には小型のコンバットナイフが装備されており、ナイトの腰の部分には高性能ビームガンを完備。まるでハンドガンのようなビームガンだ。装甲は主に血のような赤色とレモンのように明るい黄色、赤を少し混ぜたオレンジ、白で塗装されている。
対峙するは杉村中佐の同じく人型ナイト、すべてのナイトの原点。一番最初に作られた、ナイトフルバージョン。装甲の塗装は、白が八割、金が二割といったところだ。
装備はオリハルコンとプラチナをあわせて作られた剣、エクスカリバー。同じく、オリハルコンとプラチナで作られた盾、ESシールド。高性能ビームガンよりも銃弾が多く装備できるESガン。基本は同じだ。それぞれ、体長は二十メートル程度で、昔の西洋の騎士の見た目をしており、コックピットは人間で言う、みぞおちの辺りだ。
『……黙っていては拉致が明かないので……こちらから行かせてもらいます』
彼のナイトが動き出した。こちらとの距離は約二百メートル。ナイトフルバージョンはブースター全開で、その手にエクスカリバーを持ち、向かってくる。速い。時速二百は軽々超えるほどのスピード。友幸は操縦レバーを握り、ドラゴンナイトはビームガンを腰から抜き、ナイトフルバージョンに向けて撃つ。青色の一筋の閃光がビームガンから放たれる。それも、後から何発も。
『遅い!』
コックピット内に杉村中佐の声が響く。
ナイトフルバージョンは、そのビームを左右に、瞬間移動するようにすべて避ける。美しいと、つい思ってしまうほどのしなやかな避け方。距離が五十メートルほどになる。友幸はドラゴンナイトのビームガンを素早く腰に戻し、構えに入る前にオリハリコンソードを抜いた。そして、その剣を右手に持たせ、構える。
エクスカリバーが、ドラゴンナイトに振り翳される。それを何とかソードで受け止める。コックピット内が揺れると同時に、金属同士がこすれ合う音が大きく、港に響いた。
『受身になっていてはだめです。自分から攻めていかないと。ほら、僕を押し返すように……!』
「くっ……」
友幸は、ブースターレバーを限界まで上に上げる。
両者、ブースターを全開にし押したり押し返したりを繰り返す。
何とかしないと、負ける。勝たないと。負けたら、負けてしまったら……!
一週間、トイレ掃除。
神奈川基地のトイレ広いし、何か臭いし嫌なんだよ!
「……っ!!」
右手操縦レバーを限界まで押し返す。すると。
『なッ…?!』
ナイトフルバージョンのエクスカリバーが上に大きく弾かれ、海に突き刺さる。そして、ドラゴンナイトはコックピットに向けて、ソードを突き刺そうとするが、寸前で止める。
『……フ、負けました』
モニターの中でお手上げというように、両手をあげた。
その頃には、夕日はもう海に沈みかけていた。
続く
※長くなってしまったので、前半後半と分けます。