ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 双子ノ月、夜ノ国。 ( No.4 )
日時: 2010/03/15 17:49
名前: 羽鳥 (ID: 8PZUrHKn)

「イヴォンヌ様、お茶ですよ」

ガチャリと扉が開き、一人の使用人が入ってきた。
この屋敷で最年少の使用人だった。

「ディーネまで! もう、その名前やめてぇっ」
「しかし、名前を短縮するのはよろしくないかと」
「ディーネだって短縮しているくせに!」

腰まである長い茶髪、緑の瞳をしたディーネは笑った。

「お嬢さまの名前は、素敵ですよ。 短縮なんて、勿体無いです」

そう言いながら、ディーネは紅茶を入れる。
ディーネの本名は、ディオネ。

「わたしも、ディオネって素敵だと思うのに」
「使用人の名前は、短縮されて良いのですよ、イヴォンヌ様」

紅茶を入れ終わったディーネは、笑顔で部屋を出て行った。


◆   ◆   ◆


そうだ、使用人の名前は短縮されても良い。
どんなに素敵な名前でも、短縮されてしまうのだ。

「ディオネ・・・・・・」

さっきお嬢さまは素敵だと、言ってくれた。 嬉しかった。

でも、名づけられた意味は素敵じゃないんですよ。

私は次の仕事を求めて、厨房へ行った。

◆   ◆   ◆

「エドガー、つまらないから、何かしましょうよ」

わたしは難しそうな本を読んでいるエドガーに、声をかけた。
するとエドガーは本から顔を上げ、

「イヴォンヌは勉強でもしたらどうだ」

と一言だけ言い放ち、再び本に視線を戻した。

・・・・・・殴ってもいいですか。

本気でそう思った、わたし。