ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ノストラダムス!プロローグ 一部修正 ( No.1 )
- 日時: 2010/09/06 14:01
- 名前: ソフィア ◆fwGIPea7qU (ID: nWEjYf1F)
プロローグ
福岡のとあるマンション。城下ビルと呼ばれるそれは、全体的に白く高級感溢れる新築の物だった。
しかし、城下ビルの最上階・六〇一号室に住む人物を知る者は、皆口を揃えてこう言う。
「このビルには、絶対に近づくな」と——。
女は、城下ビル最上階・六〇一号室の扉を軽くノックし、部屋の主がまだ帰ってきていない事を確認してから鍵を開けた。女は、目立たない黒のスーツ姿で、髪を高いところで一つに束ねていた。社会人を思わせる格好だが、顔にはまだ幼さが残っている。大体、高校生ぐらいだろう。
女の予想通り、中には誰も居なかった。
「よかった……」
と、思わず声が漏れてしまう。そして女は、お気に入りのヴィトンのバックの中から、ショッキングピンク色の携帯電話を取り出した。
「……もしもし、悠斗? 無事入り込めたわ。……うん、解ってる。見つからないように気を付けるわ。……うん。じゃあ、また後でね」
女は、話が終わるとすぐに電話を切り、慌てた拍子でこう呟いた。
「早く……早くアレを見つけないと……」
その刹那——。
「何を見つけなきゃいけないの?」
「亮輔……!」
女の背後には、「亮輔」と呼ばれる男の姿があった。
(そんな……ありえない。部屋の中には誰もいなかったはずなのに)
女の顔に、ヒヤリと冷や汗が浮かぶ。
「いけないなぁ。人の物を勝手に奪おうなんてさ。さーてと……お仕置きは何がいいかな?」
そう言うと男は、机の上に置いてあったバックのチャックを無造作に開き、中に入っている複数の凶器を女に向かって見せびらかした。ナイフ、包丁、チェーンソー、銃など、なぜそんな物を持っているのか疑問に思う物ばかりだった。中には縄やアイマスクなんて物も。
(……こいつ、何する気なのよ)
性的な意味で身の危険を感じる女。しかし、女は引き下がらなかった。いや、むしろ立ち向かっていったと言った方がいいのかもしれない。
「……わたしの体はそんなに安くないわよ変態。それに、わたしに構っている暇があったら着替えたらどう? その服、すごくダサいわよ」
女はしっかりとした目で、「亮輔」の方を見て嘲りの言葉を口にした。
確かに、「亮輔」は現在黒ジャージにジーンズ、緑のニット帽子という何とも親父チックな格好をしていた。
そんな彼女の嘲りに応えるように、「亮輔」は自らも女の方をしっかりと見て、こう言った。
「ふぅん。それは俺への嘲笑と受け取ってもいいんだよね? 俺、怒ると怖いよ?」
そして「亮輔」は、冗談とも本気とも取れる表情を浮かべた。
「嘲笑? そう思うのは結構よ。ただ……悠斗にだけは手を出さないで」
すると、女の言葉をはあざ笑うかの様に、「亮輔」は言った。
「フ……ハハッ! もういいよ、判った。結局君は彼の操り人形に過ぎないって事だ」
「それ、どういう意味よ」
女は、聞き捨てならない「亮輔」の話に食らい付いた。「亮輔」は、ニヤニヤと悪趣味な笑みを浮かべる。
「そのままの意味さ。これ以上説明する理由は何も無いね。まぁ、どうしてもって言うなら、教えてあげない事も無いけど……その代わり、君は俺に協力してもらうよ」
女は、「亮輔」の言葉を信じているわけでは無かった。興味本位——そう、単なる興味本位で、女は「亮輔」の言葉に耳を傾けていた。
「どうするの、高原里奈ちゃん。 協力する? それとも、しない? ま、ここで協力しなかったら、国外逃亡しかないけどね」
女……いや、高原里奈は、近頃有名なハッカーである。持ち前の金に対する執着心と強欲さ、そして高いIQを持つ頭脳を買われ、とある機関の幹部クラスの秘書として活躍していた。しかし今回は機関の命令では無く、恋人の頼みで彼女は動いていた。
和島悠斗。それが、彼女の恋人の名前だ。
「わたしが悠斗の操り人形ですって? 冗談もいい加減にし……」
「冗談? この僕が冗談を言う必要が、どこに?」
まるで、里奈が言葉を発する隙を無くすかの様に「亮輔」は続けた。
「俺はそろそろ飽きてきたんだよね。世界には、俺の知らない事が無さ過ぎる。どうせなら知らない事を作りたい! 作って知って、作って知って、作って知って! そうしたらいつか、僕には知らない事なんて無くなるんだ! 知らない事が無くなった俺は、きっと誰よりも強い。だって、世界には情報に勝てる強さなんて無いんだから!」
それを聞き、里奈は思い出したように口を開いた。
「……じゃあ亮輔。この子の事は……知ってる?」
里奈はバックから一枚の写真を取り出し、「亮輔」に見せた。
「今度こっちに引っ越してくる、羅木高校一年生の男の子。確か名前は……」
「原町兼次」
「亮輔」と里奈は、二人揃って仲良く同じ人物の名前を口にした。
「やっぱり君も気にしてたんだ、彼の事」
「亮輔」の問いに、里奈はえぇ、と短く答えた。
「亮輔」は、小さく笑ってから言った。
「ふぅん。ま、別にいいけどね。とにかく、君には後から存分に働いてもらうよ。もちろん、俺だけの為にね?」
里奈はそれに対し、笑顔で
「全力で拒否するわ」
とだけ言った。
——二人の間では、常人には見えない火花が飛び交っていた。
その頃。
「ここが福岡か! テレビで見るよりすごいや!」
とある少年は、都会の街中を見て感動していた。ここが歩行者天国という物なのか、と。周辺にデパートやビルが立ち並び、道には人が溢れている。
「こんなの……初めて見た」
何しろ彼は、東北の田舎から来た田舎者なのであるから。
「今日から、福岡での新しい生活が始まるんだ!」
少年は、不安と緊張、しかし希望に満ち溢れた輝く目をして言った。
——彼の名は、原町兼次。
:後書き:
初めまして。ソフィアと言います。
本当は>>0でご挨拶したいと思っていたのですが、登場人物の設定を考えるのに熱くなってしまい、挨拶の事をすっかり忘れてしまいました。
申し訳ありません……。
あ、登場人物についての裏ネタ。登場人物の名前は全て、「脳内メーカー」を使って考えました。
ですから、「脳内メーカー」に「ノストラダムス!」の登場人物を入れてみると、見事に性格と脳内が一致していると思いますよ^^
後、プロローグが長くなってしまい大変申し訳ありません。
これからは、一話、二話と分けて書いていくので、どうぞ応援よろしくお願いします。駄作ですが……
誤字・脱字などございましたら、言ってくださると嬉しいです。感想やアドバイスもお待ちしています。
それでは、ソフィアでした〜。