ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ノストラダムス! ( No.4 )
日時: 2010/07/16 16:47
名前: ソフィア ◆fwGIPea7qU (ID: nWEjYf1F)

第一話 「兼次と少年」

「ねぇ、君どうしたの?」
「……はい?」
兼次が振り返ると、見知らぬ少年が後ろに立っていた。兼次は、
(きっと他の人の事を言っているんだ)
と思いながらも、一応周りを見渡した。すると、少年は、大声で
「何キョロキョロしてるの。君だよ、君! そこのダサい服着てる! てか、マジで一体どうしたのさ。こんな所でそんな格好……」
と言って、兼次に向かって指を指し、苦笑いした。田舎みたいな格好とは失礼な!と、兼次は思ったが、本当の事なので仕方が無い。
 兼次は、新調したチェックのシャツに、ジーパンをはいていた。自分なりにはお洒落に気を使っていたつもりだったのだが、そう言われると兼次の横を通り過ぎていく若者達とは、少しズレている様な気がする。
思い切って話を切り出そうと思ったのだが、何しろいきなりの事だったので、兼次は返答の仕方に困ってしまった。
「え、えっと……あの……ま、迷っちゃったんです。福岡、今日が初めてだから」
一生懸命紡ぎだした言葉を声に出すと、兼次は
「では」
と言って、その場から立ち去ろうとした。兼次は、少年の様なタイプは苦手なのだ。
少年は茶髪で、耳に何個ものピアスを付け、髑髏マークのプリントが目立つ、黒のダボダボTシャツを身に着けていた。ジーンズにはラインストーンが散りばめられ、おまけに胸元では、いかにも安そうなネックレスが輝いている。
(こんなチャラチャラした人と関わりたくないし……)
兼次はあくまで真面目な好青年だったので、こういうタイプの人とは付き合いを持ちたくなかったのである。

 すると少年は、その場を後にしようとする兼次の手を掴み、引っ張った。少年と兼次は、同じくらいの体格なのに、だ。細い体の割には、多少の力はあるらしい。
「あの、何ですか」
兼次が俯き加減で聞くと、少年は笑って言った。
「お前今、迷ったって言ったよな! 何なら、俺が案内してやる。家はどこだ? ん?」
——知らない人に家を教えてはいけないよ……——
実家にいる母親の声が、ふと、脳裏に過ぎる。
「……あの、何でそんなに僕に関わるんですか」
兼次が少年に聞くと、少年は当たり前の様に言った。
「友達だから!」
「は?」
兼次は、純粋に意味が解らなかった。
「君は僕に会ってしまった時点で、もう僕の奴隷……ん、失礼。友達となる事は運命、そう運命! いわゆるディスティニーだ! そうだろ、僕の新しい友達よ!」
少年はペラペラと、まるで落語家の様に話を進めていく。
(何なんだこいつ)
と、兼次が思うのも仕方が無い。
「ま、とりあえず、君の家に行こう!」
「やめてください。迷惑です」
兼次は、少年の申し出をあっさりと、そして尚且つきっぱりと断った。しかし、少年はそれでも引き下がらない。相当な世話焼きの様だ。
「いいじゃないか少しぐらい」
「嫌です」
「頼むよ友達」
「貴方は僕にとってはただの通りすがりに過ぎません」
「いいじゃないか別に」
「五月蝿いとっとと巣に帰れこのドブ虫が」
兼次の最後の言葉に負けてしまったのか、少年はもう言葉を返してはこなかった。まるで今まで断られた事が無い様な、予想外、と言った顔だ。ちょっと言い過ぎたかなぁと思いつつも、兼次の顔に反省の色は無かった。
「さて、変な人も追い払ったし、早くアパートに行こうっと」
少年の存在など無かったかの様に、兼次は涼しい顔をして呟いた。
兼次は、高鳴る胸を押さえ切れずに、駆け足で今日から住む事になるアパートへと向かった。
何しろ彼は、東北の田舎から来た田舎者なのであるから。

:後書き:
どうも、ソフィアです!
一話は、無意識に短くなってしまいました……。
すみません!
それに、今林麻奈さんのせっかくのアドバイスも、これじゃあ聞かなかったにも等しく……。
本当に今林麻奈さん、こんな駄文を読んでくださる方々、申し訳ありませんでした!!

誤字・脱字などございましたら、言ってくださると嬉しいです。感想やアドバイスもお待ちしています。


それでは、ソフィアでした〜。