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Re: ノストラダムス! ( No.13 )
日時: 2010/10/02 15:09
名前: ソフィア ◆fwGIPea7qU (ID: nWEjYf1F)

第三話 「羅木高校」

 午前八時。「亮輔」は、しかめっ面をしてパソコンに向かっていた。
「つっまーんないの! 俺も高校行きたい! 何で俺は仕事なんかしなくちゃいけないんだよ! 差別だ、これは神様が僕らに与えた理不尽という名の差別だ!」
「黙りなさい馬鹿」
鋭く突っ込みを入れるのは高原里奈。
「と、いうか……何で貴方そんな格好してるの。また仕事関係?」
 里奈は、怪訝な顔をして「亮輔」に返答を求めた。
今日の「亮輔」は、珍しく黒スーツに靴下を履くという正装だ。いつもなら、黒いジャージを着ていたり、Tシャツにジーパンを着ていたりしているのに。
ちなみに里奈は、ノースリーブにミニスカートという薄着。健全な男であるのなら、少しばかり興奮してもおかしくないのだが、「亮輔」はまるで女に興味が無いらしい。里奈のナイスボディを見向きもしなかった……と、言いたい所だが、「亮輔」は里奈の体を凝視していた。
「……何見てるのよ」
「え、えっと……あの……胸、ちっさいね」
「黙れ」
里奈は笑ってそう言った。しかし、目は少しも笑っていない。それを見て、「亮輔」は頬を引きつらせた。
「す、すいませんでした。あぁ。さっきの質問の回答なんだけど……今日ね、大統領のところに行くの」
「……はぁ!?」
里奈は、突然の事に耳を疑った。
「そんなのありえないでしょ。何変な事……」
反論を言いながらも、里奈は頭の中のどこかで思っていた。

いや、こいつならやりかねない、と。

「じゃあ俺、アメリカ行ってくる。」
「ちょ、待ちなさいよ! 今日、夕方から薬の依頼者来るんじゃ……」
里奈が慌てて止めにかかる。まさかこいつ、大統領とか嘘を言って、仕事をサボる気じゃないのか、という不安がまだ頭を過ぎっていたからだ。
「あぁ。あの女の子か。確か羅木高校だったよね。あの子は使えそうだから、ここに呼ぶのは明後日にしておいて。俺、明日の夜には帰ってこれそうだから」
「ちょ……」
「じゃあねぇ」
部屋の扉が乱暴に閉まり、残ったのは扉の奥から聞こえる「亮輔」の鼻歌だけだった。

羅木高校。
「えっと……原町兼次と言います。よろしくお願いします」
そんな平凡な紹介を終えた後、兼次は教師に指定された席に座った。兼次は安心しため息をついた。と、その時。
「挨拶緊張したろ? 上手かったぜ!」
「……はい?」
兼次の後ろには、「荒川」の名札を付けた男子生徒が立っていた。
「……あ!」
「思い出したか?」
兼次は、今でもはっきりと覚えている。「荒川」は、この前街中で執拗に兼次に話しかけてきたチャラ男である。
「え、えっと荒川君……お、同じ学校だったんだね……」
「荒川」が苦手な兼次は、あからさまに「荒川」から目をそらす。
「友達に名字? それに君付けかよ! そこは普通ニックネームで呼ぶだろ! いいだろう教えてやる! 俺のニックネームは……」
「いや、いい。止めとく」
とっさに、「荒川」の言葉をさえぎる兼次。
「そうか? しょうがないな。じゃあ、下の名前を教えてやる。俺の名前は連! 荒川連だっ!」
何でこんな五月蝿い奴と同じクラスになっちゃったんだろう、と兼次は肩を落とした。
(面倒くさいことになりそうだなぁ)

その後。
授業中に、何度か連がちょっかいを出してきたりはしたものの、授業は何とか無事に終わり、兼次は部活生勧誘の先輩達を追い払う事に明け暮れていた。
「あ、あの……僕は忙しいんで……部活に入るのは、ちょっと……」
兼次はそう言うが、強引な先輩達は引き下がろうとはしなかった。

野球部、サッカー部、ボクシング部のキャプテン達は、
「いやいや! 運動しないと、筋肉がつかないよっ! 運動が苦手だったら、是非マネージャーに来てほしいなっ」
と、マネージャーにまで勧誘してくる有様であるし、合唱部からは、
「男子が少ないんだよぉ……ね? お願いだから入部してっ!」
と、合唱部の女部長である黒木姶良に泣きながら胸を押し付けられる始末である。ちなみに、彼女の胸はEカップである。
幼い頃の事から、女性恐怖症となってしまった兼次としては、
(こっちが泣きたいよ……)
というのが本音だった。

(全く……荒川といい先輩といい、この学校は強引な奴だらけだな)
何とか部活勧誘の集団から抜け出し、兼次がそんな事を思っていると、彼の背後から聞き慣れた……いや、聞き飽きた声が聞こえてきた。
「おーいっ!! ハラケンーっ!!」
(ま、またアイツかよ……)
兼次が恐る恐る振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべた、荒川連がいた。
「よっ、ハラケン!」
「誰がハラケンだ」
兼次は眉をピクピクと引きつらせて言う。普通なら、一目で怒っていると分かるところなのだが、連はそれに気づかない……というか、気づいているのに無視しているといった様子だ。
「ノリ悪いぞハラケン! そこは普通俺が所属している空手部に来るところだろう」
「ごめん、今の君の言葉を聞いて、空手部にだけは絶対に行きたく無くなった」
兼次は爽やかに連に向けて最悪な事を吐き出した。その言葉を耳にして、連はあからさまにヨロヨロとふら付き、
「う、うぅ……そんなぁ……君が俺の部活に入ってくれないと、俺のこの呪いはとけないというのに……っ」
と、急に訳の分からない事を言い出す。兼次は、そんな連に向けて
「痛々しい。色んな意味で可哀想」
と言い放ち、さっさと桜壮に向かって歩いていった。

その途中。
「あ、あの……新しく転校して来た方、ですよね」
「え?」
兼次が振り返ると、そこには相当な美人がいた。
彼女はサラサラの黒髪を後ろで結んで、黒いブチ眼鏡をかけており、頭が良さそうな印象が与えられる。
「え、えっと……羅木高校の制服着てるし、羅木高校の人、で、いいんですよね?」
そう兼次が問うと、少女はコクンと頷いた。そして、ある意味では、今後の兼次を変えることになる、衝撃的な一言を口にした。
「あ、あの……もしよかったら……で、いいんですけど、宜しかったら、私がキャプテンをしている部活に、入ってくださりませんか? 本当に、よろしければ、の話なんですが……」
「……え?」
「私の部活、今度の地区中体連で団体戦に出るんですが……一年生が一人怪我で入院していて、出られなくなっちゃったんです。だから……お願いしますっ」
そう言って頭を下げる少女。兼次はふと、
(この子の部活になら、入ってもいいかも、というか入りたい)
そんな事を思った。兼次が答えを出すのに、そう時間はいらなかったと言えるだろう。
「じゃ、じゃあ……入っても、いい、ですよ……」
兼次は顔を赤くして、そう言った。
「あ、有難う御座います!」
少しだけ涙を浮かべてそう言う女子。本当に嬉しそうな顔をしている彼女を見て、兼次までつられて嬉しくなった。が、ある重大な事を思い出す。
「あ。そうだ、先輩がキャプテンをしている部活って、一体何部なんですか?」
兼次が当たり前といえば当たり前な質問をすると、少女はニコリと笑って言った。
「空手部です」
「え?」
「私は空手部女主将の、三年A組の渡辺加奈子です。以後、宜しく頼みます」
「え……ええぇぇ!?」

こうして兼次は、一番入りたくなかった部活に、自ら入部してしまったのであった。



:後書き:
さっき、やっと書き終わったのに……カーソルが誤って戻るボタンをクリックしやがったのです。
どういう事だよ!もう泣きたい。
まぁ、でも無事完成したからよかったよかった。

さぁ、「ノストラダムス!」これから一体どうなってしまうんでしょうか!?
「めっつ」さんの手によって公式サイトもできて、パワーアップしたノストラダムス!

あ、よろしければ、キャラ絵を描いてくだされば、URLを教えてくださいね^^公式サイトのほうに載せたいと思います!


誤字・脱字などございましたら、言ってくださると嬉しいです。感想やアドバイスもお待ちしています。

それでは、ソフィアでした〜。