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Re: ノストラダムス!  ( No.113 )
日時: 2011/02/15 18:01
名前: ソフィア ◆fwGIPea7qU (ID: nWEjYf1F)

十二話

「……その節は、本当に申し訳ないと思っています。ですが、今はまだ……ごめんなさい」
口早にそう言う撫子。それを聞いて、目を細くする連。
「……お前さ、あんまり亮輔さんの言うこと聞かないほうがいいと思う。あとでヒドい目にあっても知らないからな」
「お気遣い、感謝します。ではまた」
まるで花が咲くようにほんのりと笑い、撫子は去っていった。連は、その背中を不服そうに見つめ続けていた。

まるで、撫子を想っているかのように。

                        *

——「第二のノストラダムス」。あるいは、「予言者」。彼女——富山撫子は、各方面にそう呼ばれ、忌み嫌われていた。
連と撫子が知り合ったのは、八年前。まだ二人が七歳の頃の話である。

「ねぇ、この問題の答えなに」
「自分でやってください、簡単ですから」
これが、二人の初めての会話であった。
月に一度の席替えで、偶然隣同士になった男女が、教師にバレないように授業中に雑談をするのと同じく、ただ、何も考えずに話していた。
テストの結果の話、家族の話、お気に入りのゲームの話、そして、好きな人の話。
一ヶ月間、彼と彼女は楽しく楽しく喋り続け——当然のように別れた。そしてそれ以来、隣同士になるどころか、同じクラスになることさえなくなった。
それは高校生になった今も同様である。二人は別のクラスで、これといった交流もなかった。
しかし、羅木高校は別のクラスの友人ともスキンシップを図れるように教育をしており、昼食や選択授業の時は他のクラスの生徒と共に過ごしてもいいことになっている。
それでは、なぜ二人の交流が全くといっていいほど無いのか。
それは——撫子が、学校に来ない。いわゆる、引きこもりであるからだった。

そして、彼女が「ノストラダムス」などと呼ばれることには訳がある。
彼女は、未来を読むことができる。

人間は、過去の記憶を脳につめこみ、使わなくなった、あるいは古くなり思い出さなくなったものから順に消していく。忘れるのだ。
撫子の場合は少し違う。
過去の記憶は、使う使わない関係なく、記憶を薄めていく。忘れるのではない、薄めるのだ。
そして、なぜかはわからないが、その薄まった過去にかぶさるように、新しい記憶を司る。
その結果——彼女は未来のことを被せ、過去のことを薄める……いわゆる、予言者となってしまった。
未来のことを考えれば考えるほど、自分の中の過去が消えていく。
撫子は、悩んでいた。                       

:後書き:
久々の更新です!
右手がタヒぬ……ヤヴァイ←
それではここへんで失礼します〜