ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 白銀の少女 ( No.100 )
日時: 2010/04/15 21:27
名前: 羽鳥 (ID: Gx2AelYh)

真っ暗だった。
光を遮るこの闇は、孤独感をどこまでも拡大させる。
まるで、お前なんか生きてるだけで迷惑だ。 と言われているよう。

闇、闇、闇。 真っ暗。 光がない。 存在しない。
わたしは孤独だった。

「弥生ちゃん、疾風くん……?」

黄金の毛と、紅い瞳は見えない。

「エンジュちゃん?」

白銀の髪の輝きは見えない。

「琴葉?」

大切な親友の姿はない。

「木下魄……?」

わたしの前世である鬼もいない。

「────十夜? とう、や……?」

大切な、愛しい人の姿は現れない。

わたしは、一人だ。 孤独だ。 誰もいないんだ。
一筋の光でもいい。 とにかく何でもいい。

誰か、いて。

『────孤独は、人間の最大の弱点です』

目の前に立つ、着物を着た一人の少女。
肩までの白銀の髪に、紫の瞳。 刀を握る右手。

「木下、ハク……」

わたしの前世。

『そして、孤独はこの世に存在する生き物全ての弱点でもある。
 ────つまりな、鬼でも孤独が弱点なんだ』

その次にきこえた、別の声。
別の声と共に、木下魄は姿を消した。

「だれ?」

───琴葉?!
そう、琴葉そっくりの人間がいたのだ。

巫女装束に、日本刀を握り締める左手。
琴葉そっくりの顔、真っ黒の髪。
年齢は大体、二十歳くらい?

『初めまして、だな。 木下魄の生まれ変わりとでもいおうか?』

響く、アルトの声。

『私の名前は、初音だ。 よろしく、百合チャン』

「あ……、よろしく、です」

『まあ、そんなに硬くならずに。
 私は百合チャンに木下魄を見せに来たんだよ』

「それは、どういうこと?」

ニコリと、初音さんは笑った。

『どうか、御覧になって。
 木下魄の生きた時代を────』

眩い光が、わたしを包んだ。





次回からは過去編となりますッ。