ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白銀の少女 ( No.102 )
- 日時: 2010/04/15 22:06
- 名前: 羽鳥 (ID: Gx2AelYh)
おれは死んでしまいそうだった。
こんなに大好きなのに、
こんなに愛しているのに、
これほど君のことを、大切に想っているのに!
護りたい、守りたい。
なのに、離れていく。
◇ ◇ ◇
「何でしょうか、初音?」
襖を開け、初音の姿を捉える。
巫女であるはずなのに、わたしと同じ刀を持つ女。
初音。
「分かっているだろうけど、今夜は満月だ」
どこか遠くを見ながら、初音は淡々と喋る。
「分かってますよ、分かってます……」
「なら、良いんだ。 蒼たちのもとへ、帰りなさい」
分かってる。
今夜は満月だから、わたしも鬼狩りをしなくてはいけない。
鬼が鬼狩りをするんだ。 鬼が鬼を狩るんだ!
わたしは最強の鬼の家系に生まれた。
つい最近までは、兄がいた。
木下魁、というただ一人の兄。
同じ白銀の髪に、紫の瞳。
普通の鬼は、黄金の瞳だが木下家は紫だ。
最強という証拠。
わたしの兄は、自分の鬼の血に溺れて狂い、死んだ。
しかも、わたしの目の前で────。
あの苦しみ、狂う姿は脳裏に焼きついてはなれない。
わたしもいつか、ああなるのだろうか。
「魄、今夜は満月なんだってね……」
雪がやって来た。
お盆に、御握りを何個か持って。 作ってくれたのだろう。
「雪……。 ありがとうね」
「私ができるのは、これくらいだから」
『そうかな? 本気になれば、鬼一体は倒せるはずだけど?』
ひょい、と目の前に現れた双子の黄金狐、弥生と疾風。
今日は狐の姿でやって来た。
「弥生、疾風! どうして来たんですかッ」
バチイ、と音をたてる雪。
雪のまわりでは、何かが煌いていた。
雪は、最強といわれるほどの霊力を持っている。
だから、本当は雪が次期巫女になるはずだった。
でも、ならなかった。
千歳が次期巫女になったのだ。
理由は、不明。
『今夜が満月だから』
「よーし、じゃあ双子は仲良く山にでも帰りなさい」
ぱちぱち、音をたてる雪。
『じゃ、初音さんにでも会いに行ってくるか』
黄金の尻尾を揺らしながら、双子は初音の場所へ行った。
───何か、ある。
「まったく、遊びに来るなと言っているのに!」
お茶を飲みながら、雪は言う。