ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白銀の少女 ( No.109 )
- 日時: 2010/04/18 16:22
- 名前: 羽鳥 (ID: 0xGRiuWU)
とある屋敷の一部屋にて。
「まったく、何だったんだかね……」
一人の少女が、少し呆れたように、楽しそうに言った。
首と右腕には包帯が巻いてある。 そして、淡い桜色の着物。
その少女の前には、もう一人別の少女がいた。
別の少女は、白に桜の花柄の着物。
どちらも、初対面だ。
でも、共通点が一つだけあるのだ。
「まあ、いいんじゃない? 魄は、蒼や初音と会えたんだしっ」
「私が静養中ってことになってるんだよ」
「くす。 わたしは生まれ変わってもいないんだよ?」
笑いあう、二人の少女。
◇ ◇ ◇
学校の玄関を飛び出し、わたしは走り出す。
風にように、光のように速く。
そして、
「十夜っ……」
思い切り、十夜にしがみ付いた。
「わッ」
ぐら、と十夜の体は一瞬傾く。
だがすぐに、体勢をお立て直す。
「いきなり、どうしたんだよ?」
十夜は訊いてきた。
十夜の髪に、夕日が反射している。
「何でもないよ、ただね────」
「?」
「ごめん、やっぱり内緒、で☆
ねえ、早く帰ろうよッ」
「〜ッ、何だよ、ソレ! 意味分かんねェよ!!」
あいしてる。
◇ ◇ ◇
木下魄は、自殺したのだ。
自分の最強の鬼の血に狂い、最愛の人を殺し、自殺をしたのだ。
上坂蒼は、殺されたのだ。
本当に心から愛おしく想う、最愛の鬼に。
霧島雪は、最後まで巫女にならなかった。
だが、亡くなった。 十八、という若さで病におかされたのだ。
桐谷千歳は、最期まで巫女として働いた。
霊力はあまりなかったが、とても頑張ったのだ。
初音は、狂った鬼に殺されたのだ。
何を思い、彼女は息を引き取ったのだろう?
◇ ◇ ◇
わたしは狂いました。
本当は、お兄様みたいに死にたくなかった。
初音を、蒼を、自分を殺したくなかった。
でも、抗えなかったんです。
こんな無力なわたしを、どうか許して。
次は、ちゃんと狂わないで、普通に生きていくから。
次は、ちゃんと蒼を愛するから。
◇ ◇ ◇
おれの弱さが、魄を鬼に追い詰めた。
次は、もっとちゃんと、おれが護るんだよ。
◇ ◇ ◇
今夜は十夜の家族が、お出かけをしているらしい。
だから、十夜は夕食をわたしの家で食べると言った。
食べ終わり、適当にテレビをみていた午後八時。
ピンポーン。
家のチャイムがなった。
わたしは玄関へ向かい、誰が来たかと顔を覗かせる。
「はい?」
「鬼狩りの時間ですよ、白銀の少女」
月明かりに照らされている鬼刀・桜花を握り締めて。
鬼と共に、場所へ向かうの。
◇ ◇ ◇
永遠となれ、白銀の少女。
その輝く紫の瞳は、百年続く鬼と変わらない。
たとえ千年生きる鬼でも、その白銀の少女には勝てないだろう。
全てを知り、人間を経験した鬼。
人を愛し、親しみ、鬼を狩る。
永遠となれ、白銀の少女。
終わり