ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 白銀の少女 ( No.51 )
日時: 2010/03/31 14:59
名前: 羽鳥 (ID: zTHJAdPC)

やっぱりこれは、ホラー映画の撮影なのでしょうか。

突然転校生が、わたしの目の前で血を流すなんて。
しかも、『誰の血だと思う?』と、指名されました。
なんと、フルネームで。

「や、あの、ね? コハクちゃん……あの?」
「どうしたの、園原さん。 分からない? これは誰の血?」

声は明るいが、表情は無表情だ。

「それは、コハクちゃんの─────」

ポタ、と紅い血が一滴落ちる。
その紅い雫に、わたしは目を奪われる。
それは、コハクちゃんの血じゃないか。

───違う。

それは、それは、それは……。
わたしの中で、何かが壊れるような音がした。

それから、ふわふわとした変な浮遊感。

【あぁ、ようやくこの時が来たのですね】

◇   ◇   ◇

一滴だけ、血を落とすと傷は自然と治った。
まるで、私の意志があるようだ。

園原百合を、見る。

薄紫だった瞳は、一瞬で完全な紫になっている。
やはり、本当に木下魄の生まれ変わりなだろう。

となると、本気でやらなければ。
いくら『血』だけでも、本当の魂には勝てない。

「………っ?!」

みるみる、園原百合の茶髪が変わっていく。
私のような、白銀の髪に!

肩までの白銀の髪に、強い光を宿した紫の瞳。
放たれる、普通とはどこか違う、不思議な空気。

「来たんだね……ッ、木下魄!」

『貴方は誰ですか、わたしの血を流していますね?』
木下魄は言う。 

園原百合のなかにいた、木下魄は今。 目覚めたのだ。