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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白銀の少女 ( No.52 )
- 日時: 2010/03/31 15:38
- 名前: 羽鳥 (ID: zTHJAdPC)
同じ場所にいるだけなのに、私と木下魄の空気は違う。
……やっぱり、本当に最強の鬼だったんだな。
「私? ……木下コハク」
『────死体をいじるのが、趣味なんでしょう?』
ニヤリ、と木下魄は笑った。
かと思うと、いつの間にか私の目の前にいた。
間近にある紫の瞳。
「ッ」
『こうやって動くのは、本当に久し振りなんですよ』
木下魄が、ちょいっと私の左肩を突く。
「かッ────?!」
ドン! と、私はコンクリートの壁に強く、背中を打つ。
一体何が起こったのか、一瞬の出来事でよく分からなかった。
ああ、木下魄が私をぶっ飛ばしたのか。
『本当はこんなこと、したくないんだけどね。
……勝手に人の血を輸血しちゃ、駄目かと思って』
コツコツ、と木下魄は私に近づいてくる。
『木下コハク、でしたよね?
名前までわたしに似せようと?』
私の前で、止まる。
『わたしの血を使おうと、それはわたしのものだから』
園原百合じゃなく、木下魄。
『そんなに強く、なりたかったのですか?』
「……かはっ。 あぁ、そうです」
『悲しいことですね。 非常に、悲しいことです』
『魄さん────ッ!』
突然、黄金の狐が二匹屋上にやって来た。
あれが噂の双子の黄金狐、弥生と疾風か……。
『……また今度、会いましょうね。 木下コハクさん?
いえ、エンジュさんでしたね……?』
するすると、白銀の髪が茶髪に戻っていく。
紫だった瞳は薄紫になる。
───園原百合になる。
「コ…ハク、ちゃん?」
どういうこと、何があったのかという表情をしている園原百合がいる。
だから私は言ってやった。
「そこの狐に、訊いてみたら……?」
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