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Re: 白銀の少女 ( No.59 )
日時: 2010/04/01 15:18
名前: 羽鳥 (ID: UgN/I8x0)

たくさんの鬼が存在した、江戸時代京のまち。

その鬼の中でも、最も最強だった鬼の家系。 木下家。
木下家最後の娘の名は、木下魄。
白銀の髪に、強い光を宿す紫の瞳は最強の鬼である証拠だった。

そして木下魄のただ一人の兄、木下魁。
だが魁は鬼の血に狂い、大切な妹に狩られてしまう。

「狩られてしまう……?」
『そう。 ま、聞いててね』

木下魄は、自分が鬼であるのに、鬼を狩っていた。

同じ屋敷に住む、巫女と共に。

その屋敷には、木下魄。 鬼を狩る巫女。
次期巫女になる少女。
本当は自分が次期巫女になるはずだった、少女。

それからちょくちょく遊びに来ていた、少年。
たまに来ていた、木下魁。

そして、双子の黄金狐。 弥生と疾風。

『そして木下魄は若いのに、鬼にやられてしまった』
『木下魄の魂は、転生した。 園原百合に』

双子の狐の紅い瞳が、わたしを見据えた。

『ま、これでオシマイなんだけど……』
『今はこれだな。 な、木下コハク?』

今まで顔を伏せていたコハクちゃんは、顔を上げる。
ギロリ、と双子の狐を睨む。

「言えばいいんでしょう? 言うわ、言うもの!
 私の本当の名は、エンジュ。 江戸から続く、鬼の家系の者!」

白銀のような髪を、振り乱しながら言う。

「私は陰から、木下魄を見ていたの!
 同じ鬼なのに、鬼を狩っていく貴方をね!
 勿論、死体まで見た」

『あたしたちと、年齢はあまり変わらないんだねー』

キッ、と睨む。
木下コハクではなく、エンジュが。

「貴方はたくさんの血を流していた。 
 ああ、勿体無い。 最強の鬼の血が、流れている!
 
 ───そこで私は、少しだけ自分の体内に貴方の血を入れた。
 
 するとな、髪は貴方のような白銀に!
 力は今まで以上になったわ。 さすが、最強の血ね」

「だから、白銀の髪なの……?!」
「そうだけど!」

『まあ、もう君はエンジュになったからね』
『木下コハクじゃないもんね〜』

「だだ、黙りなさい! 狐めッ」
「それで、エンジュちゃんはどうするつもり?」

「ふん。 まさか本当に本物がいるとは思わなかったからね。
 しばらくはここにいる。 木下コハクでね!」

『お前はエンジュでしょお?!』

「仕方ないでしょう! その名前で出しちゃったんだから」

なんだか、疲れそうだな。
家に帰って、寝てもいいですか?