ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白銀の少女 ( No.72 )
- 日時: 2010/04/04 16:23
- 名前: 羽鳥 (ID: X96rB3AK)
ちょうどグラウンドの真ん中あたりに佇む、鬼。
ギラギラと黄色の瞳で、睨む。
巨大なその体。 よく絵本とかで出てくる鬼。
それよりもっと迫力があり、とても怖い!!
『……あれを狩れば、いいんですよ』
「嫌だッ。 怖いじゃん! どうすればいいの?!」
『私も知らないわ! 木下魄じゃないんだし!』
「わたしも、知らないんだもん!」
『じゃあ、木下魄に訊け─────ッか!』
突然、エンジュちゃんがぶっ飛んだ。
「エンジュちゃっ……?!」
校舎の壁にぶち当たる、エンジュちゃん。
『かはッ、けへッ……! 気をつけろ!!』
ペッと血を吐きながら叫ぶ。
『飛べ!』
軽く、膝を屈折させる。
ひょうっと、わたしは校舎より高く跳ぶ。
下を見ると鬼が黄色の瞳で、わたしを睨んでいた。
そして鬼も、
「ひゃあああ! 来たあああああああ!!」
高くジャンプして、わたしのところまで来たのだ。
急いでわたしは急降下。
地面に着地すると、わたしはエンジュちゃんの場所へ走った。
「エンジュちゃん!」
『はやく狩れ!』
「だからっ、どうやって!」
『だからあ、訊け!』
ドシンドシン、と大きな足音。 鬼が迫ってくる音だろう。
「木下魄さあああああんッ、どうすればいいんですかあああ?!」
『……世界一のばかでしょう、貴方』
エンジュちゃんは、口元の血を拭いながら言う。
『仕方ない。 私は今、半分だけ鬼化しているわ。 だから、代わりにやる』
呟くように言うと、エンジュちゃんはわたしの横をすり抜けて行った。
「エッ………!」
腰まで伸びた白銀の髪が、ゆらゆらと揺らいでいる。
黄色になった瞳は、ギラギラと獣のように光る。
たんっ、と軽く地面を蹴る。
「!」
一瞬で、鬼の場所へ向かう。
やっぱり鬼の力は、すごいんだね……。
鬼と鬼の、戦闘が始まった。
エンジュちゃんは、すぐに鬼の正面に立った。
鬼はエンジュちゃんを殺そうと、大きく左腕を振る。
静かに、エンジュちゃんは両腕を上げた。
そして、
『儚く散りなさい、そう、花のように……』
静かに呟く。
鬼の大きな左腕は突然、砂のようにサラサラと風にのり、儚く消えた。
グラウンドに響く、鬼の奇声。