ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白銀の少女 ( No.73 )
- 日時: 2010/04/04 16:22
- 名前: 羽鳥 (ID: X96rB3AK)
◇ ◇ ◇
「どうしてまた来るのです、弥生と疾風!」
ぷうと頬を膨らませる、弥生と疾風。
わたしの怒鳴り声が聞こえたのか、雪がやって来た。
燃えるような瞳で、弥生と疾風を睨む。
「弥生、疾風! もう来ないと言ったでしょう!!」
わたしより大きな声で、怒鳴る雪。
そして、バチバチと音をたてている。
『さすが最強の霊力の持ち主だねぇ』
「いいから、帰りなさい!」
『どうして次期巫女になれなかったの?』
「はいはい、帰った帰った!」
巫女装束を着た初音が、雪と双子の喧嘩を止めるのでした。
◇ ◇ ◇
『奇声がすると思って来たら、こういうことねぇ』
突然、わたしの真上で双子の声がした。 たぶん、疾風くん。
見上げると、そこには人間の姿をした双子がいた。
「弥生ちゃん! 疾風くん!」
『あの奇声で、エンジュは苦戦するよぉ。 あれ、頭に響くから』
「じゃあっ、どうしたらいいの?!」
ニヤ、と弥生ちゃんの口元が笑う。 紅い目は笑わない。
『鬼狩りすればいいんだよ。 ただの鬼が鬼狩りしても、無理』
「だからっ、どうやって?!」
『さあ?』
可愛らしく、双子は声を揃えて首を傾げる。
そんなやりとりをしていると、エンジュちゃんがぶっ飛んできた。
額から血を流し、苦しそうに顔を歪めて。
「エンジュちゃん……!」
『かッ……、うぅ。 どうやって狩れば、分からなくて……』
黄色い瞳を細めながら、弱弱しい声で言う。
「………」
『百合さん?』
「こうなったら、わたしが何とかするしか、ないでしょッ!」
わたしは軽く、地面を蹴った。
すると一瞬で鬼の目の前に来れた。 おぉ、さすが鬼の力。
鬼は新しく来た者を、見つめる。
ここまで来たけど、どうすればいいんだろう?!
『何やってんのよおおおおお』
本当に、どうしましょう。
そんなことを考えていると、目の前に鬼の大きな爪があった。
それはゆっくり、振り上げられ───。
「!!」
殺される!
わたしはギュッと目を瞑る。
だが、いつになっても痛みは来ない。
「……え?」
そっと目を開ける。
「……!! どうして?!」
そこには、日本刀で鬼の爪を押さえた、十夜がいた。