ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 白銀の少女 ( No.78 )
日時: 2010/04/05 20:47
名前: 羽鳥 (ID: LaYzdlO4)

「とおっ、や……?!」

どうして十夜が、ここに来ているの?!
しかも日本刀を持っている! どうして、何故?
ぐるぐると、疑問がわたしの頭を駆け巡る。

十夜は素早く、日本刀で鬼の上半身を斬る。
赤い血が飛び散る。 わたしの頬にもついた。
だが、相手は鬼だ。 驚異的な治癒力があるのだ!

ぐぐぐ、ときられた上半身は戻っていく。

「十夜ぁあ、どうしているの、ねえ?!」

十夜の背中に問う。
まだ鬼は再生している途中だ。 攻撃されることは、ないだろう。
十夜はゆっくり、ゆっくりと振り向いた。
わたしと同じく、頬に血がついていた。

十夜は優しく笑う。 触ったら、壊れてしまいそうな笑顔だ。
十夜の黒髪が、十夜の漆黒の瞳が、十夜の────。

「とお、や……?」

わたしは吸い込まれそうな感覚におちる。

十夜は変わらない、優しい笑顔でこう言った。
その一言で、わたしは目覚める。

「魄……、ハク……」

たしかに十夜は、見せたことのない優しい笑顔で言った。
『ハク』と────!!

体中が熱くなる。 全ての動きがスローモーションになる。
自分で髪の色が変わっていくのが、分かる。
脳裏に見たことのない風景が、映し出される。
きいたことのない声。 だけど、どこか懐かしい。

ああ、これは────。


『わたしは木下魄になったのね……』


◇   ◇   ◇

するすると、百合さんの髪が白銀になっていく。
紫の瞳が強い光を放つ。 放たれる、あのオーラ。

あれは、あれは……!

『やっと出たね……、魄さん!』

鬼を狩る最強の鬼、白銀鬼、木下魄。

◇   ◇   ◇

変わったのは髪の色と、瞳の色。
中身は木下魄。 このわたしだ!

(あなたが、木下魄さんね?)

頭に響く、この体の持ち主。 わたしの生まれ変わり。
園原百合の声。 今回は成功したようね。

『えぇ、わたしが白銀鬼、木下魄』
(鬼狩りができるってことでしょう?)
『───勿論』

木下魄さんは、十夜の持っていた日本刀をとった。
というか、十夜が差し出したのだ。

『懐かしいな、この刀』
(あなたの刀だったの……?!)
『そう。 鬼刀、桜花。 これで鬼狩りができる』

そう言うと、魄さんは高く跳んだ。

『ふうん、これはまた手ごわそうな鬼』

真上から垂直に鬼を斬る。
そして、二つに割れた鬼をキッと睨みつけた。

するとその鬼は、桜の花になってしまった!
はらはらと舞う、たくさんの桜の花。
綺麗、だった。