ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 白銀の少女 ( No.95 )
日時: 2010/04/14 21:34
名前: 羽鳥 (ID: 0VC4e9y5)

(まず、どういうこと? どうしてエンジュちゃんが?)

ぐったりと倒れているエンジュちゃんを見ながら、わたしは問う。
すると、木下魄はうーんと唸った。
しばらくの間、沈黙が続く。

『分からないわ。 鬼の血に溺れたのでしょうか……』

「鬼の血に溺れるなら、とっくに溺れてるはずだよぉ」

突然、人間の姿をした弥生ちゃんが言う。
長い金髪が、夜風になびいている。
その隣には腕から血を流している、疾風くん。

(疾風くん……!)
『その、黄金狐の弟は大丈夫なんですか?』

「疾風? うん、一応ねぇ」

ぽんぽんと疾風くんの頭を撫でる。

「それで、そこの鬼はどうなるのさ」

『弥生、少し言い方が悪いですよ』

面倒くさそうに、はいはいと返事をする弥生ちゃん。
木下魄は、少し呆れた顔をした。

(それで、エンジュちゃんは?!)
『全く分からないわ……』

「あたしも分からない」

二人はとても困った顔をしている。
……本当に、エンジュちゃんはどうしちゃったの?

────と。

くい、と誰かが左腕を引っ張った。
体はわたしのもの。
中身は今、木下魄。

わたしの精神と、木下魄はソレを見る。
誰が腕を引っ張ったのか、と。

紫の瞳が、見開かれる。



【思い出して御覧なさい、貴方の生きた時代を】

不気味に光る黄金の瞳が、笑いかけた。