ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 短編集。 ( No.1 )
- 日時: 2010/03/19 16:46
- 名前: 時雨 ◆fpcvJMKcxg (ID: xs5T8t9X)
「……うそつき」
その言葉が自分の口から発せられたものだと気付いた時、既に目の前の彼は驚いたようにこちらを見ていた。
ああ、言ってしまった。何があろうと、この一言だけは言わないと決めていたのに。彼が、……否、私がこの世で一番嫌いな「嘘」を含んだ、この一言だけは。
ああ、もうどうなろうと構うものか。言ってしまった以上は戻れない。一度聞いた言葉はそうすぐには忘れない。
「……うそつき、嘘吐き。……お前なんて、大嫌いだ」
だいきらい。……って
彼によって小さな声で復唱されたその言葉を遮って、私はその部屋を勢いのままに飛び出した。……そのままそこにいられる人がいたら、お目にかかりたいものだ。
部屋を出た途端に私を包む闇が頬を伝った雫を掻き消した。
……戻れないな、もう。
零れた涙は、自嘲か悲しみか。
… … …
「……うそつき」
彼女の口から発せられたその言葉は、僕の存在を否定されたにも等しい言葉で。その次に発せられた言葉……「大嫌い」と。それは、彼女に僕への恋愛感情と呼べるものが消え去った事を意味する言葉だった。
「……うそつき、嘘吐き、……お前なんて、大嫌いだ」
「だいきらい、って」
(嫌い?君が?僕を?)
あの時は本当に狂いそうになった。……確かに僕は嘘ばかりだったが、これだけは本当だ。恐らくは、……いや、絶対(だと信じたい)か?彼女への「愛」と呼ばれる感情も。
やっとその考えに至った頃には、君はもうどこかに行ってしまっていた。
(君が僕を、もう愛せないと、そう言うのなら)
(僕は、君を愛している僕のために死のうじゃないか)
もう、戻れないのだ。
何度その言葉を繰り返したか、などもう忘れた。
恐らく彼には、私に対する「愛」などもうなかったから。だから引き止める事もしなかったのだろう。追いかけてくる事さえも。
(……自意識過剰にも程がある)
愛してもいない女性を追いかけてくる男性など、どこにいるというのか。
……戻れないなら、もう、貴方が私を愛せないと言うのなら。
(私は、私が愛したあなたの為に死のうじゃないか)
嘘吐闇夜
(さようなら。愛した人よ)
〜〜
なんだこれすごく暗い。
しかもお題に沿ってない。