ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 煉獄−業火の女王− ( No.11 )
- 日時: 2010/03/23 21:13
- 名前: 紺 (ID: zCJayB0i)
第九話−家族−
手を繋いで茜と暁は家へと帰る。
他愛もない話をしながら、黄昏の空の下を歩くのだ。
「・・・のう茜」
暁は、何かを思いつめたように口を開いた。
「ん〜?どうしたの?暁」
今日のご飯何にしようか。といいながら暁を見つめる。
「茜は、寂しくないのか?」 「何が?」
暁の瞳と茜の瞳が入り混じる。
「父も母も居らぬあの家に独り、何の変哲も無い毎日を送るのは辛くないのか?」
暁の問いに、茜はにこにこしたまま答える。
「さぁどうだろうね。物心ついた時には仕事で帰ってこないなんてざらだったからなぁ・・・・。
寂しいなんて考えたこと無かったよ。でもね、今はすごく楽しいよ?」 「?何故じゃ」
茜は暁の手を強く握りしめる。
「暁が居るから!すごくすごーっく楽しいよ」
えへ。と顔の筋肉が緩み、だらしのない笑顔を浮かべる。
「・・・・そうか。それはほんに良かったのう」
暁も笑い、家への道に意思を向ける。
「これからもずっと暁がいてくれたら私は嬉しいよ!」
その言葉に暁は曖昧な笑顔を向ける。
「・・・・・その答え、我の本当の姿を見ても変わらぬままで居てくれるのかのう・・・・」
茜に聞こえないような声で、暁はポツリと呟いたのだった。
その夜。暁は眠れずにいた。
「・・・・・・・・・・・・・」
<これからもずっと暁がいてくれたら私は嬉しいよ!>
茜の言葉と共に、楽しそうな笑顔が脳裏に焼き付いて離れない。
「・・・・・何を迷っておるのじゃ、我は・・・」
修復し終えた窓を開け、夜風を部屋に招き入れる。
その冷たさは、暖かな布団を一気に冷ましていった。
「我は煉獄の王。願って叶わぬことなど一つとして無かった。しかし・・・・・」
すやすやと眠る茜の顔をちらりと見る。
「・・・・・・・・これだけは、王たる我でも叶わぬ願いやもしれぬのう・・・」
夜の闇に小さな溜め息を吐いたのだった。