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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 煉獄−業火の女王− ( No.15 )
- 日時: 2010/03/24 18:26
- 名前: 紺 (ID: zCJayB0i)
第十二話−信念−
気づいた時にはあそこに居た。
紅蓮の炎に包まれた真っ赤な宮殿。
そこの玉座に、私は座っていた。
人とは違う力を持って、人とは違う生を生きている。
それが、<私>だった。
端下の者は私を<女王>として畏怖し、配下は<陛下>として崇拝した。
それがいつしか当たり前になって、私は人の上に立つ者として生きてきた。
その中で、私は<あの人>に会った。
<あの人>は他の者とは全く違っていて、私に対等に接してくれた。
それがいつまでも続くと思っていた。・・・・なのに。
<あの人>はどこかに行ってしまった。私を裏切って。
・・・・それがどうしても許せなかった。
憎くて、憎くて憎くてたまらなかった。だから・・・・・。
「だから、我はこの世界に参ったのじゃ。<あやつ>を殺すために・・・・」
茜の眠る隣で暁はポツリと呟く。
「昔は無邪気だったものよ。あれ程までに好意を募らせるとは、我ともあろう者がのう・・・・・。
しかし結局は居なくなってしまった。手の内から零れおちる砂のように・・・・・・・・・。
そして時を重ねることで我は捻くれていき、今ではこの有り様よ。不甲斐ないのう・・・・・」
暁は茜の頬をそっと撫でる。
「不貞腐れて可愛げのなくなった我を見ても尚、<可愛い>などと言ってくれるのはそなただけじゃ。
有難う、姉上・・・・」
暁は少し崩れたような笑顔をして、布団に潜った。
『そう。我は殺さなければならぬのじゃ。<あやつ>を。絶対に。
・・・・・それなのに、胸を締め付けるこの圧迫感は何なのじゃ・・・・・・・・』
痛む胸を押さえながら、答え無き問いに思考を巡らし、深き眠りへと落ちて行ったのだった。
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